「IP68だから防水でしょ?」——そう思ってお風呂にスマホを持ち込んでいる人、けっこう多いですよね。実際、最近のiPhoneもAndroidも「IP68」という高い防水等級を持っています。でも、お風呂での使用はどのメーカーも推奨していません

この記事では、2026年3月時点の情報をもとに、IP68の「防水」が本当に意味すること、お風呂で使うとなぜ壊れるのか、そして万が一水没させてしまったときの正しい応急処置を解説します。

IP68の「防水」ってどういう意味?——テスト条件を知ると怖くなる

スマホのスペック表でよく見る「IP68」。これはIEC(国際電気標準会議)の規格「IEC 60529」に基づいた防塵・防水の等級です。最初の「6」が防塵(最高レベル=粉塵が内部に入らない)、次の「8」が防水の等級を表しています。

IP68の防水テストは、「常温(15〜35℃)の真水に、水深1〜6mで最大30分間沈める」という条件で行われます。つまり、テストで使われるのは「ぬるい水道水」だけ。ここがポイントです。

ちなみに、iPhoneの場合、機種によって耐えられる水深が異なります。Apple公式サポートページによると、iPhone 15/16シリーズはIP68で最大水深6メートル・30分間の耐水性能を持っています。ただし、Apple自身が「液体による損傷は保証対象外」と明記しています。

お風呂でスマホを使うとなぜ壊れるの?——5つの落とし穴

「IP68なら大丈夫じゃん」と思いがちですが、お風呂の環境はIP68のテスト条件とまったく違います。具体的に見ていきましょう。

落とし穴1:お湯の温度が高すぎる

お風呂のお湯は一般的に38〜42℃。IP68テストの上限(35℃)を超えています。高温は内部のゴムパッキン(防水シール)を変形・劣化させ、すき間から水が入りやすくなります。

落とし穴2:湯気(蒸気)が内部に侵入する

お風呂場の湯気は、液体の水よりもずっと小さな粒子です。防水パッキンは「液体の水」を防ぐ設計であり、蒸気(水蒸気)を完全に防ぐことはできません。内部に入り込んだ蒸気が冷えると結露になり、基板がショートする原因になります。

落とし穴3:シャンプー・入浴剤は「真水」じゃない

IP68テストは真水で行われます。シャンプー、ボディソープ、入浴剤などが混ざったお湯は、防水パッキンを化学的に侵食する可能性があります。Google公式(Android)も、石鹸水での使用は防水性能の対象外としています。

落とし穴4:温度差でパッキンが縮む

お風呂から出て冷えた部屋に戻ると、スマホ本体が急激に冷やされます。この温度差でゴムパッキンが収縮し、わずかなすき間が生まれることがあります。ここから水分が侵入するケースが意外と多いんです。

落とし穴5:充電しながらの入浴は命に関わる

SNSでも話題になっていましたが、充電ケーブルを繋いだままお風呂に持ち込むのは絶対にNGです。水に浸かった状態で通電すると感電のリスクがあり、海外では実際に死亡事故も報告されています。充電ポートに水が入った状態で充電すると、端子が腐食して二度と充電できなくなるケースもあります。

防水性能は「永遠」じゃない——経年劣化の現実

新品のスマホのIP68性能も、使い続けるうちに確実に劣化します。これはメーカー各社が認めている事実です。

劣化の主な原因は以下の3つです。

  • 落下によるフレームの歪み:目に見えないレベルの歪みでもパッキンにすき間ができる
  • 充電ポートの摩耗:ケーブルの抜き差しでポート周辺のシールが劣化する
  • ゴムパッキンの自然劣化:ゴムは時間とともに硬化し、密閉性が下がる

ざっくり言うと、購入から1〜2年経ったスマホは、新品時よりも確実に防水性能が落ちていると考えてください。「買ったときはIP68だったから大丈夫」は通用しません。

水没させてしまったら?——正しい応急処置5ステップ

万が一スマホを水没させてしまった場合、最初の数分の対応で復旧率が大きく変わります。以下の手順を覚えておいてください。

ステップ1:すぐに水から引き上げて電源を切る

水中で通電していると基板がショートします。引き上げたら真っ先に電源ボタンを長押しして電源OFFにしてください。画面が映っていても、映っていなくても、とにかく電源を切ることが最優先です。

ステップ2:ケース・SIMカードを外す

ケースと本体のすき間に水が溜まりやすいので、すぐに外しましょう。SIMトレイも取り出して、中に水が入っていないか確認します。

ステップ3:柔らかい布で水分を拭き取る

糸くずの出ない柔らかい布(メガネ拭きなど)で、外側の水分をやさしく拭き取ります。充電ポートやスピーカーの穴は、ティッシュをこよりにして水分を吸い取りましょう。

ステップ4:乾燥剤と一緒に密閉袋に入れる

お菓子の袋に入っているシリカゲル(乾燥剤)があれば、スマホと一緒にジップロックなどの密閉袋に入れます。乾燥剤がなければ、風通しの良い乾燥した場所に置いて自然乾燥させてください。

ステップ5:最低24時間は触らない

内部の水分が完全に蒸発するまで、最低24時間、できれば48時間は電源を入れないでください。焦って電源を入れると、残った水分でショートして完全に壊れる可能性があります。

絶対やってはいけないNG行動4つ

水没後にやりがちだけど、実はスマホの故障を悪化させる行動があります。

NG1:本体を振って水を出そうとする

振ることで水分が内部の基板全体に広がり、被害が拡大します。振らずに静かに置いてください。

NG2:ドライヤーで乾かす

温風は内部のICチップやバッテリーを傷めます。冷風でも、風圧で充電ポートから内部に水を押し込んでしまう恐れがあります。ドライヤーは温風・冷風ともにNGです。

NG3:電子レンジに入れる

信じられないかもしれませんが、実際にやってしまう人がいます。電子レンジは金属部品を含むスマホに使うと発火・爆発の危険があります。絶対にやめてください。

NG4:すぐに充電する

内部に水分が残った状態で充電すると、ショートして修理不能になるケースがあります。完全に乾燥するまで充電は厳禁です。

お風呂でスマホを使いたい人への代替案3つ

「でもお風呂でYouTube見たいんだけど……」という人のために、安全な代替案を紹介します。

1. 防水ケース(IPX8対応のもの)を使う

スマホ本体の防水に頼るのではなく、専用の防水ケースに入れて使うのが最も安全です。IPX8対応の防水ケースなら、万が一水没しても本体には水が届きません。1,000〜2,000円程度で購入できます。

2. 防水Bluetoothスピーカーを使う

音楽やポッドキャストを聴くだけなら、防水Bluetoothスピーカーを脱衣所に置くのが手軽です。スマホ本体はお風呂場に持ち込まずに済みます。

3. 古いスマホを「お風呂専用機」にする

機種変更で使わなくなった古いスマホをWi-Fi接続して、お風呂専用の動画視聴端末にする方法もあります。壊れても困らないので精神的にも安心です。

FAQ

IP68のスマホならプールや海で使っても大丈夫?

推奨されません。プールの塩素や海の塩分はIP68テストの対象外です。塩分は金属端子を腐食させ、塩素はパッキンを劣化させます。使った場合は、すぐに真水で洗い流して乾燥させてください。

防水スマホが水没しても保証で修理してもらえる?

基本的にできません。Apple、Samsung、Googleなど主要メーカーはすべて「液体による損傷は保証対象外」としています。AppleCare+に加入していても、水没修理は有償(自己負担額が発生)です。

スマホを水没させた後、お米に埋めると復活するって本当?

よく聞く民間療法ですが、効果は限定的です。米粒の粉が充電ポートやスピーカーの穴に詰まり、かえって故障の原因になることもあります。シリカゲル(乾燥剤)を使うか、そのまま自然乾燥させる方が安全です。

水没後、画面は映るけどスピーカーから音が出ない場合はどうすれば?

スピーカー内部にまだ水分が残っている可能性があります。iPhoneの場合は「ショートカット」アプリで水を排出する機能がありますが、基本的には24時間以上乾燥させてから再度確認してください。改善しない場合は修理店に相談しましょう。

お風呂で毎日スマホを使っているけど壊れていない。大丈夫?

今は大丈夫でも、湯気やお湯への露出で防水パッキンは確実に劣化しています。ある日突然壊れるケースが多く、「今まで平気だったのに急に水没故障した」という修理相談は非常に多いそうです。防水ケースの利用をおすすめします。

参考文献