「自分にもしものことがあったら、あのサブスクの解約は誰がやるんだろう?」——先日、フリーランス仲間とのZoomでこの話題になったとき、画面の向こうの全員が黙り込んでしまいました。

焦らなくて大丈夫です。今日からできる準備はとてもシンプルで、特別な知識も必要ありません。この記事では、自分が使っているWebサービスのアカウント情報を整理して、Google・Appleの公式機能で家族に引き継げるようにする方法を順番にご紹介していきます。

「デジタル終活」って何?なぜ今やっておくべき?

デジタル終活とは、自分が使っているWebサービスやアプリのアカウント情報を整理して、万が一のときに家族が困らないようにしておく準備のこと。やることは「アカウント一覧を作る」「公式の引き継ぎ機能を設定する」、大きく分けてこの2つだけです。

2024年11月、国民生活センターが「今から考えておきたいデジタル終活」という啓発資料を公開しました。「故人が契約したサブスクの請求を止めたいが、IDとパスワードがわからない」といった相談がこの8年間で約3倍に増えているとのことです。もはや他人事ではありません。

先日、母のネットスーパーのログイン問題を電話越しに解決したとき、ふと気づいたんです。もし私に何かあったら、母は私のNetflixやAmazonプライムの解約なんてできるだろうか? そもそも、私がどのサービスを使っているかすら知らないはず。これがデジタル終活を始めるきっかけになりました。

ステップ1:自分が使っているWebサービスを「全部書き出す」

まずはアカウントの棚卸しからです。「そんなの全部は覚えてない」という方がほとんどだと思います。大丈夫、以下の4つの方法で確認すればかなり網羅できます。

方法1:メールの受信箱を検索する

Gmailなら検索窓に「ご登録ありがとう」「アカウント作成」と入力してみてください。過去に登録したサービスからのウェルカムメールが出てきます。in:anywhere を先頭に付けると、迷惑メールフォルダやゴミ箱も含めた全体検索になります。

方法2:スマホのパスワード保存機能を見る

iPhoneなら「設定」→「パスワード」、Androidなら「設定」→「パスワード マネージャー」を開きます。過去にブラウザやアプリで保存したログイン情報が一覧で表示されるので、ここを見るだけで「自分が使っているサービスの全体像」がかなりつかめます。

方法3:クレジットカードの明細をチェックする

過去3か月分のクレカ明細に、月額や年額の引き落としがないか見てみましょう。忘れていたサービスが見つかることも珍しくありません。

方法4:ノートかスプレッドシートにまとめる

見つけたサービスは「サービス名・ログインID・用途」の3列で書き出しておきます。パスワードそのものを書くかどうかは家族との相談次第ですが、「何を使っているか」の一覧だけでも、いざというとき家族が「まず何を解約すればいいか」を把握できるようになります。

ステップ2:Googleの「アカウント無効化管理ツール」を設定する

Googleには、アカウントが一定期間使われなくなったときに指定した家族へデータを共有したり、アカウントを削除したりできる公式機能があります。名前は「アカウント無効化管理ツール」。堅い名前ですが、設定自体は5分で終わります。

順番に進めていきましょう。

  1. Googleアカウントにログインした状態で myaccount.google.com/inactive にアクセスする
  2. 「開始する」をタップ
  3. アカウントが使われていないと判断するまでの期間を選ぶ(3か月・6か月・12か月・18か月から選択できます。迷ったら12か月がおすすめ)
  4. 期間が来る前にGoogleから届く確認通知の送信先(電話番号・メールアドレス)を設定する
  5. データを共有する家族を追加する(最奇10人まで。共有するサービスはGmail・Googleフォト・Googleドライブなどから選べます)
  6. 「プランを確認」をタップして完了

2026年5月時点で、Googleは2年以上使われていないアカウントを削除するポリシーを運用しています。この無効化管理ツールを設定しておけば、削除される前に家族がデータをダウンロードする猶予を確保できます。ふだん通りGmailやGoogleフォトを使っている限り、何も起こらないので安心してください。

ステップ3:Appleの「故人アカウント管理連絡先」を設定する

iPhoneやiPadを使っている方は、Appleの「故人アカウント管理連絡先」(レガシー連絡先)も設定しておくと安心です。これは、万が一のときにiCloud上の写真・メモ・連絡先などへアクセスできる人をあらかじめ指定しておくApple公式の機能になります。

  1. iPhoneの「設定」を開き、いちばん上にある自分の名前をタップ
  2. 「サインインとセキュリティ」→「故人アカウント管理連絡先」をタップ
  3. 「故人アカウント管理連絡先を追加」をタップし、相手を選ぶ(最大5人まで)
  4. 表示される「アクセスキー」を相手に共有する(AirDrop・メッセージ・印刷から選べます)

もし「故人アカウント管理連絡先」の項目が見当たらない場合は、iOSのバージョンが15.2未満の可能性があります。「設定」→「一般」→「ソフトウェア・アップデート」から最新版に更新してみてください。

ひとつ大切なことがあります。アクセスキーは32桁の英数字で構成されたコードで、QRコードとしても表示されます。このキーを紛失すると、たとえ家族でもAppleへの申請が通りません。QRコード付きPDFを印刷して、通帳や保険証書と一緒に保管しておくのがおすすめです。

LINE・サブスクは?主要サービスの「もしも」対応まとめ

Google・Apple以外のサービスも気になりますよね。2026年5月時点での主要サービスの対応をまとめました。

サービス家族による引き継ぎ対応方法
LINE不可アカウント削除のみ。家族がLINE公式に申請して削除可能。トーク履歴は事前バックアップが必要
Instagram不可「追悼アカウント」への切り替え、または削除申請が可能
X(旧Twitter)不可遺族がアカウント削除を申請可能
Amazon不可カスタマーサービスに連絡して解約
Netflix / Spotify等不可各社カスタマーサポートへ連絡

ここで知っておいてほしいのが、サブスクリプション(月額課金)サービスはクレジットカードを止めても自動的には解約されないという点です。支払いが滞ると「未払い」状態になるだけで、アカウント自体は残り続けるケースがほとんど。だからこそ「何のサービスを契約しているか」の一覧を家族が持っていることが大切になります。

うちでも結局、紙のノートとGoogleスプレッドシートの両方にアカウント一覧を書いておく方式に落ち着きました。どちらか片方だけだと「ノートの場所がわからない」「スプレッドシートへのログインがわからない」となりかねないので、二重にしておくと安心です。

FAQ

「デジタル終活」は何歳から始めるべきですか?

年齢は関係ありません。Webサービスを日常的に使っている人なら誰でも対象です。国民生活センターも「年齢にかかわらず早めの準備を」と呼びかけています。アカウント一覧を作るだけなら30分もあれば終わるので、気軽に始めてみてください。

パスワードを家族に教えるのが不安です。どうすればいいですか?

パスワードそのものを共有する必要はありません。まずは「どのサービスを使っているか」の一覧だけ作れば十分です。Google・Appleの公式機能を使えば、パスワードを教えなくてもデータの引き継ぎができます。

Googleの無効化管理ツールを設定したら、すぐにアカウントが消えませんか?

消えません。設定した期間(3〜18か月)アカウントが使われなかった場合にだけ動作します。ふだん通りGmailやGoogleフォトを使っていれば何も起こりません。

Appleのレガシー連絡先に指定された人は、今すぐ私のデータを見られますか?

見られません。アクセスキーだけでは何もできず、実際にデータにアクセスするには死亡証明書をAppleに提出する必要があります。設定しただけで相手にデータが見えることはないので安心してください。

アカウント一覧は紙で作るのとデジタルで作るの、どちらがいいですか?

どちらでも構いませんが、家族が「すぐ見つけられること」がいちばん大切です。おすすめは紙のノートとスプレッドシートの併用。紙は通帳や保険証と一緒に保管し、デジタルは家族と共有しておくと安心です。

参考文献