Have I Been Pwnedに自分のメールアドレスを入れた日のことを、今でもはっきり覚えている。2019年の漏洩事件にヒットして冷や汗をかいた。パスワードは即変更したが、ふと別の不安が頭をよぎった。「メールアドレス以外の個人情報も、ネット上に転がっているのでは」と。
試しにGoogleで自分のフルネームを検索してみた。すると、数年前に利用した不動産系サイトのキャッシュに旧住所と電話番号がそのまま残っていた。削除依頼の方法がわからず、数日間放置した記憶がある。
この種の問題に使えるのが、Googleが無料で提供する「あなたに関する検索結果」(Results about you)という機能だ。自分の住所、電話番号、メールアドレスがGoogle検索に出ていないかを自動で監視し、見つかったら削除リクエストを送れる仕組みである。
「あなたに関する検索結果」の仕組みと対応範囲
結論から言う。この機能はGoogleアカウントがあれば誰でも無料で使える。日本では2025年6月に提供が始まり、2026年2月のアップデートで運転免許証やパスポートなど政府発行IDの検出にも対応した(Google公式ブログ, 2026年2月10日)。
監視対象として登録できる情報は以下のとおり。
- 氏名(本名、旧姓、ニックネーム)
- 自宅住所
- 電話番号
- メールアドレス
- 政府発行の身分証番号(2026年2月追加。米国先行、順次拡大)
登録した情報をGoogleが定期的にスキャンし、検索結果に一致するページが見つかった場合に通知が届く。通知を受け取ったら、そのまま画面上で削除リクエストを提出できる。
仕様上の制約を先に述べておく。この機能が削除するのはGoogle検索のインデックスからの表示であり、元のWebサイトからデータが消えるわけではない。SIer時代、基幹システムの承認ログが「全社読み取り可」のデフォルト権限で半年間放置されていた事故を経験したが、構造は似ている。表示を消しても、データの出元を塞がなければ根本解決にはならないのだ。
初期設定の手順
設定はスマホのGoogleアプリからが最も手軽だ。PCの場合はmyactivity.google.com/results-about-youから直接アクセスできる。所要時間は3〜5分程度。
ステップ1:機能にアクセスする
Googleアプリを開き、右上のプロフィールアイコンをタップ。メニューから「あなたに関する検索結果」を選択する。初回は「使ってみる」ボタンが表示されるので、それをタップすればセットアップ画面に進む。
PCの場合はブラウザで myactivity.google.com/results-about-you に直接アクセスすればよい。Googleアカウントにログイン済みなら、同じセットアップ画面が開く。
ステップ2:監視する情報を登録する
検索結果に表示されているか確認したい自分の名前を入力する。本名だけでなく、旧姓やニックネームも追加可能だ。次に、住所、電話番号、メールアドレスのうち、監視したい項目を入力する。複数の住所や電話番号を持っている場合は、それぞれ登録しておくと検出漏れを減らせる。
ステップ3:通知をオンにする
登録完了後、通知設定の画面が出る。ここでメール通知をオンにしておくと、検索結果に自分の情報が見つかったタイミングでGoogleから連絡が届く。設定しなくても手動で確認はできるが、オンにしておくのを推奨する。放置して気づかないまま何ヶ月も経過するのが最悪のパターンだからだ。
通知設定まで完了したら、Googleが数時間以内にスキャンを実行し、結果が「確認待ち」タブに表示される。
削除リクエストの出し方と審査の流れ
スキャン結果に自分の情報を含むページが見つかると、「確認待ち」タブにリストアップされる。各結果をタップすると、どのWebサイトに掲載されているか、どの個人情報が含まれているかの詳細が表示される。
「削除をリクエスト」を選択すると、Googleの審査チームに申請が送信される。審査のポイントはGoogleの個人情報削除ポリシーに記載されており、主に以下の条件を満たすかどうかで判断される。
- 掲載されている情報が申請者本人のものであること
- 連絡先情報(住所、電話番号、メールアドレス等)が含まれていること
- 本人の同意なく掲載されていること
審査結果は数日から数週間で通知される。承認された場合、Google検索のインデックスから当該ページが除外される。進捗は「削除リクエスト」タブでいつでも確認可能だ。
却下された場合でも、再申請は可能である。ただし同じ内容で繰り返し送っても結果は変わらない。却下理由を確認し、追加情報があれば補足したうえで再申請するのが実際的な対応だ。
Google検索から消えても元サイトにはデータが残る
繰り返しになるが、この機能で消えるのはGoogle検索の表示だけだ。元のWebサイトにデータが残っている限り、BingやYahoo!(日本のYahoo!検索はGoogle連動だが、Yahoo! JAPANのキャッシュは別管理)など他の検索エンジンには引き続き表示される可能性がある。
根本的にデータを消すには、掲載元のWebサイトに直接削除を依頼する必要がある。サイトの問い合わせフォームやプライバシーポリシーに記載された連絡先から「個人情報の削除」を申し出る。日本の改正個人情報保護法(2022年4月施行)では、不適正な利用や漏洩があった場合に本人が利用停止・消去を請求できる権利が明記されている。
筆者の場合、不動産系サイトの問い合わせフォームから削除を依頼したところ、5営業日でページごと削除された。企業側も個人情報の取り扱いには敏感な時代なので、きちんと依頼すれば対応してもらえるケースが大半である。応じてもらえない場合は、Googleの法的削除リクエストを検討する段階に入る。
月1回のセルフ検索を習慣にする
「あなたに関する検索結果」の自動監視は便利だが、万能ではない。登録していない表記ゆれ(漢字とひらがなの違い、旧字体など)で掲載されているケースには対応できないからだ。
対策として、月に1回は自分のフルネームでGoogle検索をかけるセルフチェックを推奨する。SIer時代、毎朝アクセスログを目視チェックしていたルーティンと発想は同じだ。海外IPからのSSHブルートフォース攻撃を朝のログ確認で発見したことがあるが、ネット上の個人情報も「見に行かなければ気づけない」性質のものである。
検索時のポイントを2点だけ挙げる。まず、検索クエリにダブルクォーテーションをつけて "山田 太郎" のように完全一致検索にすること。次に、自分の名前に加えて旧住所の地名や勤務先名を組み合わせて検索すること。これで拾える情報量が段違いに増える。
※ 検証はGoogle検索(2026年6月時点、日本語設定)およびGoogleアプリ(iOS版 15.23)で実施した。UIや利用可能な機能は地域やアカウント設定によって異なる場合がある。
FAQ
「あなたに関する検索結果」は無料で使えるのか?
無料だ。Googleアカウントがあれば追加費用なしで利用できる。以前はGoogle Oneサブスクライバー限定だったが、2024年に全ユーザーに開放された。
削除リクエストが承認されるまでどのくらいかかるのか?
ケースによるが、数日から数週間が目安だ。承認後、実際にGoogle検索結果から消えるまでにさらに数時間かかる場合がある。進捗は「あなたに関する検索結果」ページの「削除リクエスト」タブで随時確認できる。
Google検索から消えれば他の検索エンジンからも消えるのか?
消えない。この機能はGoogle検索のインデックスのみが対象だ。Bing、DuckDuckGo、Yahoo! JAPAN独自キャッシュなどには別途対応が必要になる。元サイトのデータを削除するか、各検索エンジン個別に削除申請を出す必要がある。
会社名や過去の職歴が検索結果に出る場合も削除できるのか?
原則として対象外だ。この機能の削除対象は住所、電話番号、メールアドレスなどの連絡先情報と政府発行IDに限られる。職歴や経歴情報の削除は、掲載元サイトへの直接依頼か、Googleの法的削除リクエストで個別対応する形になる。
参考文献
- Google 検索の検索結果で自分の連絡先情報を見つけて削除する — Google検索ヘルプ
- How to remove your government ID numbers from Google Search — Google公式ブログ, 2026年2月10日
- Google 検索から個人情報を削除する — Google検索ヘルプ
- Google expands tools to let users remove sensitive data about themselves from Search — TechCrunch, 2026年2月10日





