前職の社内 IT 推進部に在籍していたとき、Notion の Plus プランを全社 800 名に一括展開したことがある。組織のドキュメント管理をひとつに集約しようという判断だった。ところが半年後に利用状況を確認すると、アクティブ率(週 1 回以上ログインしたユーザーの比率)はわずか 40% にとどまっていた。

実際に Notion を使い込んでいたのは営業・プロジェクト管理・コンテンツ制作の 3 チームだけ。残り 60% のユーザーは「開いたことはある」レベルで、月額コストのほとんどが無駄になっていた。半年かけて Free プランと Plus プランの混在運用に切り替え、月額を 6 割カットした。この判断を最初からしていれば、相当のコストを節約できたと今でも思っている。

Notion の有料プランは「全社展開から始める」より、「Free プランで使い始め、2 ヶ月後にアクティブ率を測り、実際に使い込む人だけに Plus を付与する」順番のほうが、コストの先行を防げる。規模別に線を引かないと、確実にコストが先行する。

Notion のプラン構成と 2026 年時点の主な機能差

2026 年 4 月時点で、Notion のプランは大きく 4 段階ある。料金は USD 建て決済のため、ここでは公式ドル価格と 150 円換算の概算を併記する。

プラン月額(年払い)主な特徴・制限
Free0 円ページ無制限。チームスペースなし。ゲスト 10 名まで
Plus$12/人 ≈ 1,800 円チームスペース利用可。ゲスト 100 名。ファイルアップロード無制限
Business$15/人 ≈ 2,250 円SAML SSO。高度な権限管理。ワークスペースアナリティクス
Enterpriseカスタム監査ログ・SLA・コンプライアンス機能

2022 年以降、Notion の Free プランはブロック数上限が事実上撤廃された(Notion 公式プライシングページ参照)。個人のメモ・タスク管理・社内 Wiki 的な使い方なら、Free プランで大半のユースケースが賄えるようになっている。

Free と Plus の実質的な壁は「チームスペースの有無」と「ゲスト 10 名上限」の 2 点だ。外部関係者(取引先・フリーランス)を Notion に招待して一緒に編集する機会が多いチームは、Plus が必要になる。逆に社内メンバーだけで閉じているチームは、Free で相当長く使い続けられる。

50 名に全員 Plus を配ると年間いくらかかるのか

アクティブ率と課金人数の関係を規模別に出す。

チーム規模全員 Plus の月額(概算)アクティブ率 40%(実使用者のみ)差額(月)差額(年)
10 名18,000 円7,200 円(4 名)10,800 円129,600 円
30 名54,000 円21,600 円(12 名)32,400 円388,800 円
50 名90,000 円36,000 円(20 名)54,000 円648,000 円
100 名180,000 円72,000 円(40 名)108,000 円1,296,000 円

50 名規模でアクティブ率が 40% に落ち着いた場合、全員課金を続けると年間 64 万円以上が無駄になる。前職 800 名の規模ではこの数字がさらに大きかった。

ただし、アクティブ率の水準はチーム規模で変わる傾向がある。前職の 800 名規模では 40% を下回っていたが、コンサル先の 20〜30 名スタートアップでは 70% 超のケースも多い。小規模チームほどツールが浸透しやすいため、一律のラインで判断するのではなく実測が必須だ。

Notion のアクティブ率を測定する方法

Notion Plus プランでは、Business や Enterprise のような専用の「アナリティクス画面」がない。ただし、管理者として以下の方法でアクティブ率をおおよそ把握できる。

方法 1: メンバー一覧の目視確認(無料・手動)

  1. Notion の設定画面 → 「メンバー」タブを開く
  2. 全メンバーのリストをスプレッドシートにコピーする
  3. 各メンバーに「先週 Notion を使ったか」を Slack や社内チャットで一問アンケートする(回答率が低い場合は「使っていない」と見なして問題ない)

方法 2: Notion API でアクティブユーザーを取得(技術者向け)

Notion の API(Notion Developers 公式ドキュメント)を使うと、ワークスペース内の各ユーザーのページ編集履歴を取得できる。管理者権限の API キーを発行し、`/v1/users` エンドポイントからユーザー一覧を取得。その後、ページの `last_edited_by` フィールドを集計して、過去 30 日以内に編集したユーザーを抽出する方法だ。スクリプトを書ける担当者がいれば、月 1 回の定期チェックを自動化できる。

方法 3: Business プランに上げてアナリティクスを使う

Business プランでは「設定 → アナリティクス」でユーザー別のページ作成数・編集数が確認できる。Plus からの移行コストは 1 人あたり $3/月の追加。アクティブ率の継続的な管理を優先するなら、Business へのアップグレードは選択肢になる。

まず方法 1(手動目視)から始め、継続的な管理が必要になった段階で API 計測か Business 移行を検討する流れが、無駄なく機能する。

「Free → 2 ヶ月測定 → 限定 Plus」で運用する具体的な手順

実際の展開では、次の 4 ステップで動くと無駄が出にくい。

  1. 全員 Free からスタートする(0〜2 ヶ月目): チームスペースは管理者が 1 つだけ作成し、Free の共有ページで業務を始める。ゲスト 10 名上限・ファイルアップロード制限に引っかかったケースが出た時点が Plus 移行の判断材料になる
  2. 2 ヶ月後にアクティブ率を測る: 週 2 回以上 Notion を編集・コメントしているメンバーをリストアップする。このリストが Plus 付与の候補だ
  3. 実使用者だけに Plus を付与する(2 ヶ月経過後): 典型的には全体の 30〜50% に収まる。ゲスト 10 名制限に引っかかる管理者やリーダーにも付与する
  4. 月次ライセンスチェック(以後): 前月に Notion への書き込みが 0 回だったメンバーの Plus ライセンスを Free に戻す。新たに使い始めたメンバーには Plus に切り替える。慣れると 15 分以内で完了する

50 名規模のスタートアップでこのステップを試してもらったところ、全員 Plus 展開と比べて 6〜7 割のコストで同じ業務効果が得られた。前職で失敗した経験があるので、今はクライアントに必ずこの順番を勧めている。

なお、価格は USD 建てのため為替によって変動する。この試算は 2026 年 4 月時点の概算だ。Notion の価格改定が行われた場合は Notion 公式ページで再確認してほしい。

FAQ

Notion Free プランと Plus プランの一番大きな違いは何ですか?

チームスペースと、ゲスト招待上限の差(Free:10 名 / Plus:100 名)。2022 年以降はブロック数制限が事実上なくなったため、社内メンバーだけで使う用途なら Free で長く使える。取引先やフリーランスを定期的に招待するなら、ゲスト 11 名目で Plus が必要になる。

Notion Business と Plus、50 名スタートアップはどちらから始めるべきですか?

まず Plus から始めるのが現実的だ。Business は $15/人(年払い)で、アナリティクスや SAML SSO が使えるが、50 名未満のスタートアップで SSO が必須なケースは多くない。アクティブ率の継続管理が必要になった段階で Business に切り替えると、コストを無駄にしない。

すでに全員に Plus を配ってしまいました。今から縮小できますか?

できる。Notion の管理者画面でメンバーごとにプランを変更し、Free に戻せる。年払い契約の場合、途中縮小の返金については Notion のサポートポリシーを確認すること。返金対象外になるケースがあるため、契約更新前に縮小判断をする方が損失を最小化できる。

アクティブ率の測定はどのくらいの頻度でやるべきですか?

月 1 回で十分だ。作業は「前月に書き込みゼロのメンバーを Free に戻す」と「新規に使い始めたメンバーに Plus を付与する」の 2 点だけ。初回の洗い出しに 1〜2 時間かかるが、その後の月次チェックは 15 分以内で回せるようになる。

参考文献