Excelファイルを開いたら、画面の上に「セキュリティリスク:マクロの実行がブロックされました」という赤いバーが出て、マクロが動かない——。2026年3月現在、この症状に困っている人がめちゃくちゃ増えています。

これはMicrosoftが2022年7月から段階的に導入したセキュリティ強化が原因です。インターネットからダウンロードしたOfficeファイルに含まれるVBAマクロは、初期設定で自動的にブロックされるように変わりました。以前のように「コンテンツの有効化」ボタンをクリックするだけではマクロを実行できなくなっています。

この記事では、マクロがブロックされる仕組みをわかりやすく解説したうえで、安全にブロックを解除する5つの方法を紹介します。「会社から送られたExcelマクロが動かない!」「業務で使うマクロ付きファイルが開けない!」という方は、ぜひ参考にしてください。

なぜマクロがブロックされるようになった?「Mark of the Web」の仕組み

まず、なぜ突然マクロが動かなくなったのかを理解しておきましょう。

Windowsには「Mark of the Web」(MOTW・ゾーン識別子)という仕組みがあります。ざっくり言うと、インターネットからダウンロードしたファイルに「このファイルはネットから来たよ」という目印(タグ)を自動で付ける機能です。

以前のExcelでは、MOTWが付いたファイルを開くと「保護されたビュー」が表示され、「編集を有効にする」→「コンテンツの有効化」の順にクリックすればマクロを実行できました。しかし、Microsoftの公式ドキュメントによると、2022年7月のアップデート(バージョン2203以降)から、MOTWが付いたファイルのVBAマクロは「コンテンツの有効化」ボタン自体が表示されなくなり、完全にブロックされるように変わりました。

つまり、以下のような経路で入手したファイルはすべてブロック対象です。

  • ブラウザでダウンロードしたExcelファイル(.xlsm, .xlsb, .xls など)
  • メールの添付ファイルとして受信したもの
  • SharePoint や OneDrive から「ダウンロード」したもの(ブラウザ経由)
  • ZIPファイルを解凍して取り出したマクロ付きファイル

この変更の背景には、VBAマクロを悪用したマルウェア(ウイルス)やランサムウェアの被害が急増していたことがあります。マクロは便利な自動化機能ですが、攻撃者にとっても「ユーザーにクリックさせるだけでウイルスを実行できる」便利な手口だったのです。

対処法1:ファイルのプロパティから「ブロックの解除」にチェックを入れる(最も簡単)

一番カンタンで安全な方法がこれです。ファイル単位でMOTWを解除できます。

手順:

  1. ブロックされたExcelファイルを右クリックして「プロパティ」を選択
  2. 「全般」タブの一番下にあるセキュリティ欄を確認
  3. 「このファイルは他のコンピューターから取得したものです。このコンピューターを保護するため、このファイルへのアクセスはブロックされる可能性があります。」というメッセージの横にある「許可する」にチェックを入れる
  4. 「適用」→「OK」をクリック
  5. Excelファイルを開き直す

これだけでマクロが実行できるようになります。信頼できる送信元からのファイルであることを確認してから行いましょう。

なお、「許可する」チェックボックスが表示されない場合は、ファイルにMOTWが付いていない可能性があります。その場合はマクロのセキュリティ設定(後述)を確認してください。

対処法2:PowerShellの「Unblock-File」コマンドでまとめて解除する

複数のファイルを一括でブロック解除したい場合は、PowerShellを使うと便利です。

手順(1ファイルの場合):

  1. スタートメニューで「PowerShell」と検索して起動
  2. 以下のコマンドを入力してEnter:

Unblock-File -Path "C:\Users\ユーザー名\Downloads\ファイル名.xlsm"

フォルダ内の全ファイルを一括解除する場合:

Get-ChildItem -Path "C:\Users\ユーザー名\Downloads\マクロファイル" -Recurse | Unblock-File

このコマンドは、ファイルに付いているZoneId(MOTWの実体)を削除します。やっていることは対処法1の「許可する」チェックと同じですが、大量のファイルを扱うときに圧倒的に楽です。

対処法3:「信頼できる場所」にフォルダを登録する(業務ファイル向け)

毎回プロパティを開くのが面倒な場合は、特定のフォルダを「信頼できる場所」として登録する方法があります。そのフォルダに入れたファイルは、MOTWの有無に関係なくマクロが自動的に有効になります。

手順:

  1. Excelを開き、「ファイル」→「オプション」をクリック
  2. 左メニューから「トラスト センター」(セキュリティ センター)を選択
  3. 「トラスト センターの設定」ボタンをクリック
  4. 左メニューから「信頼できる場所」を選択
  5. 「新しい場所の追加」をクリック
  6. 業務用マクロファイルを保存するフォルダのパスを指定
  7. 必要に応じて「この場所のサブフォルダーも信頼する」にチェック
  8. 「OK」で閉じる

注意点: デスクトップやダウンロードフォルダなど、広い範囲を信頼できる場所に指定するのはセキュリティ上おすすめしません。業務用マクロ専用のフォルダ(例: C:\業務マクロ)を作って、そこだけを登録するのがベストです。

対処法4:「信頼できるドキュメント」として個別に許可する

Excel 2021やMicrosoft 365では、ネットワーク上のファイルを「信頼できるドキュメント」として登録できる場合があります。ただし、MOTWが付いたインターネットからのダウンロードファイルにはこの方法は効かないことがあるので注意してください。

社内ネットワーク(イントラネット)上の共有フォルダにあるファイルで「セキュリティの警告」が出る場合は、以下を試してみましょう。

  1. ファイルを開いたときに表示される黄色い「セキュリティの警告」バーで「コンテンツの有効化」をクリック
  2. 次回以降、同じファイルではマクロが自動的に有効になる

赤いバー(「セキュリティリスク」)が表示される場合は、この方法では解除できません。対処法1〜3を使いましょう。

対処法5:グループポリシーで組織全体の設定を変更する(IT管理者向け)

企業のIT管理者であれば、グループポリシーを使って組織全体のマクロブロック設定を制御できます。

Microsoftの公式ドキュメントによると、以下のグループポリシー設定が用意されています。

  • 「VBA マクロ通知設定」: アプリケーションごとに、マクロの動作を「無効(通知なし)」「無効(通知あり)」「デジタル署名付きのみ有効」「すべて有効」から選択できる
  • 「インターネットから取得した Office ファイルの VBA マクロの実行をブロックする」: このポリシーを「無効」にすると、MOTWが付いたファイルでも従来のように「コンテンツの有効化」ボタンが表示される

ただし、このポリシーを安易に「無効」にするのはセキュリティリスクが高いため、Microsoft は推奨していません。代わりに、信頼できる場所の設定や、マクロへのデジタル署名を活用することが推奨されています。

やってはいけないNG行為

マクロが動かないからといって、以下の方法はやめましょう。

  • マクロのセキュリティレベルを「すべてのマクロを有効にする」に設定する → すべてのファイルのマクロが警告なしで実行され、マルウェア感染のリスクが跳ね上がります
  • レジストリを直接編集してMOTWを無効化する → Windows全体のセキュリティ機能が無効になり、マクロ以外の保護も失われます
  • 送信元不明のマクロ付きファイルのブロックを解除する → 知らない相手から送られたマクロファイルは、マルウェアの可能性が高いです。ブロックされた状態のまま削除してください

FAQ

Q. 以前は「コンテンツの有効化」ボタンがあったのに消えたのはなぜ?

Microsoft 365のバージョン2203(2022年7月)以降、インターネットからダウンロードしたファイルでは「コンテンツの有効化」ボタンが表示されなくなりました。代わりにファイルのプロパティから「許可する」にチェックを入れる方法でブロックを解除できます。

Q. 社内のSharePointやOneDriveからダウンロードしたファイルもブロックされる?

ブラウザ経由でダウンロードした場合はMOTW(Mark of the Web)が付くため、ブロック対象になります。OneDriveの同期フォルダから直接開く場合や、SharePoint上でExcel Onlineとして開く場合はブロックされません。

Q. マクロのブロックはExcel以外のOfficeアプリでも起きる?

はい。Word、PowerPoint、Access、Visio、Publisherでも同じ仕様変更が適用されています。対処法もExcelと同じです。

Q. ZIPファイルに入れて送ればブロックされない?

Windows 11の標準機能やよく使われる解凍ソフト(7-Zipなど)はZIP内のファイルにもMOTWを引き継ぎます。そのため、ZIPに入れてもブロックは解除されません。

Q. マクロに「デジタル署名」を付ければブロックされない?

信頼された証明書でデジタル署名されたマクロであれば、ブロックされずに実行できます。企業で多数のマクロファイルを配布する場合は、IT部門にデジタル署名の導入を相談するのがおすすめです。

参考文献