再現条件はChrome 137.0 / macOS Sequoia 15.5 / Googleアカウント無料枠 / 2026年5月20日時点である。この環境で2026年4月14日にGoogleが「Gemini in Chrome」へ追加した「スキル(Skills)」を実機検証した。正体はよく使うプロンプトを保存して「/」一発で呼び出すショートカット機能だ。拡張機能も課金も不要、Googleアカウントだけで走る。プロンプトの手打ち繰り返しコストを、仕組みで殺しに来た更新と読み解いた。

筆者は普段、Claudeで業務メモを要約させているが、以前プロンプトの書き方をほんの少し変えただけで出力の構成がガラッと変わり、30分ほど「どっちが正しいんだ」と悩んだ。毎回同じプロンプトを手打ちするのは地味にリスクが乗る。スキル機能はこの「プロンプトの再現性」問題を仕組みで潰しに来ている。SIer時代に定型作業をシェルスクリプトへ落として属人化を排除していた発想と、構造的にはまったく同じだ。

「スキル」の仕組みと利用条件

スキルの実体は、Gemini in Chromeのサイドパネルに保存された「名前付きプロンプト」になる。保存したプロンプトはGoogleアカウントに紐付き、同じアカウントでログインしたChrome間で自動同期される。

利用条件を整理する。

  • 対象ブラウザ: デスクトップ版Chrome(Windows / macOS / Chromebook Plus)。2026年5月時点、iOS版ChromeのGemini in Chromeは日本未対応
  • アカウント: 18歳以上のGoogleアカウントでログイン済みであること
  • 費用: 無料。Google AI ProやGoogle Workspace有料プランは不要
  • 言語: 日本語対応済み(2026年4月21日のAPAC展開で日本を含む7カ国に拡大)

ポイントは「無料」という1点に尽きる。Gemini in Chrome自体が無料で提供され、スキル機能もその延長線上に乗る。ただし自動ブラウジング(Auto Browse)のようなエージェント機能はGoogle AI Pro契約かつ米国限定で、スキルとは別物だ。混同しないこと。

自分だけのスキルを作る3ステップ

スキルの作成手段は3通り。どれも所要1分以内である。

方法1: サイドパネルから新規作成

  1. Chromeの右上にあるGeminiアイコンをクリック(またはキーボードショートカット Alt + G、Macなら Option + G)でサイドパネルを開く
  2. テキストボックスに / を入力してスキルメニューを表示し、「スキルを追加 +」をクリック
  3. スキル名(例:「議事録の要点抽出」)とプロンプト本文を入力して「保存」

これだけ。次回から / を打てば保存したスキルが一覧に並ぶ。

方法2: チャット履歴から保存

Geminiとやり取りしている最中に「このプロンプト、また使うな」と感じたら、そのプロンプトのメニューから「スキルとして保存」を選ぶ。名前を付けて保存すればライブラリに追加される。実際に動かして出力を見てから保存できるため、品質を確認した上で残せる流れが合理的に組まれていると判断する。

方法3: chrome://skills/browse から管理

アドレスバーに chrome://skills/browse を打ち込むとスキル管理画面が開く。ここでプリセットスキルの一覧閲覧、自作スキルの編集・削除、プロンプト文面の微調整がすべて完結する。

検証環境: Chrome 137.0(macOS Sequoia 15.5)、Googleアカウント(無料)、2026年5月20日時点。

プリセットスキルの中身——40種類以上を無料で使える

Googleは chrome://skills/browse40種類以上のプリセットスキルを用意している。カテゴリは「学習」「リサーチ」「ショッピング」「ライティング」など。Google公式ブログ(2026年4月14日)によれば、以下のようなスキルがプリインストールされている。

  • Explain simply: 今読んでいるページの難しい文章を、幼稚園児にもわかる言葉に噛み砕く
  • Protein max: レシピページを開いた状態で実行すると、高タンパク食材への置き換え提案を出す
  • Check job fit: 求人ページの内容を自分の経歴と照合し、マッチ度を分析する

仕様上は、プリセットスキルをそのまま使うだけでなく、コピーして自分用にカスタマイズもできる。「Explain simply」を複製して、出力言語を日本語に固定したバージョンを作る、といった運用が成立する。

筆者が試した限り、日本語プロンプトで自作したスキルも問題なく動く。プリセットは英語ベースだが、出力指示に「日本語で回答して」と1行足せば日本語で返ってくる。

業務で使える活用例5つ

プリセットをそのまま叩くのも悪くないが、スキルの本領は自分の業務に合わせた「マイプロンプト」の保存にある。筆者が実際に登録して回している5つのスキルを並べる。

1. ページ要約(日本語・箇条書き固定)

プロンプト例: このページの内容を日本語で要約してください。形式は箇条書き5項目以内、各項目80文字以内。専門用語にはカッコ書きで補足を付けること。

出力フォーマットを固定しておけば、毎回同じ構造で要約が返ってくる。冒頭で触れた「プロンプトを少し変えただけで構成が変わる」問題は、これで決着がついた。

2. 英文メールの下書き生成

プロンプト例: 以下の日本語の要件を、ビジネス英語のメール文面にしてください。件名・本文・締めの挨拶を含めること。トーンはprofessionalかつconcise。

Xでも「英語メールで今後DeepLを使うことがないかも」という反応があった。翻訳ツールとの違いは、Geminiが現在開いているページの文脈を参照できる点にある。取引先のWebサイトを開いたまま「このページの製品について問い合わせるメールを書いて」と指示できる。タブを行ったり来たりする手間が消える。

3. 競合ページの比較分析

プロンプト例: 現在開いているタブのページ内容を比較し、共通点と相違点を日本語の表形式で整理してください。

スキル機能は複数タブに対しても効く。競合サービスの料金ページを3タブ開いた状態でこのスキルを実行すれば、横断的な比較表が返ってくる。SIer時代にRFPの回答書をExcelで並べて比較していた作業が、数秒で片付くようになった。

4. 技術ドキュメントの変更点チェック

プロンプト例: このページの技術仕様を読み、前回の版(以下に貼る)との変更点を箇条書きで列挙してください。追加・変更・削除に分類すること。

公式ドキュメントの仕様変更を追う際に回している。完全な差分ツールの代替にはならないが、「どこが変わったか」の初期スクリーニング用途としては十分に機能する。

5. 記事の事実チェック用メモ抽出

プロンプト例: このページから、日付・数値・固有名詞(製品名・企業名・人名)をすべて抽出し、箇条書きで列挙してください。

ソース記事を開いてこのスキルを実行すれば、裏取りすべき項目が一覧で並ぶ。Geminiの抽出結果自体も原典と照合する必要があるが、「何を確認すべきか」のリストアップ用途としては十分に実用的である。動かないと意味がない——筆者はこの5つを毎日叩いている。

スキル機能の注意点と現時点の制限

便利だが、制限もある。整理しておく。

  • iOS版Chrome非対応: 2026年5月時点で、日本のiOS版ChromeではGemini in Chrome自体が使えない。デスクトップ限定である
  • Auto Browse(自動ブラウジング)とは別物: Geminiがブラウザを自動操作するAuto Browse機能はGoogle AI Pro契約かつ米国限定。スキルはあくまで「プロンプトの保存・呼び出し」であり、ブラウザの自動操作は行わない
  • 出力精度はGeminiモデル依存: スキルが保存するのはプロンプトのみ。回答の品質はGeminiのモデル性能に依存する。ページの構造が複雑な場合や、PDF埋め込みページでは抽出精度が落ちるケースを確認している
  • 機密情報の扱い: スキルで処理した内容はGoogleのサーバーに送信される。社内の機密文書をスキルで要約させる場合は、所属組織のAI利用ポリシーを確認すること。Google Chrome公式ヘルプにデータの取り扱いに関する記載がある

※ 検証はmacOS環境のみ。Windows / Chromebook Plusでの挙動は未確認のため、環境差がある可能性は否定できない。

FAQ

Gemini in Chromeのスキル機能は無料で使えるのか?

無料。Googleアカウント(18歳以上)でChromeにログインしていれば、追加課金なしでスキルの作成・保存・実行が回せる。Google AI Proは不要である。

スキルは他のパソコンでも使えるのか?

同じGoogleアカウントでログインしたChrome間で自動同期される。自宅のデスクトップで作ったスキルを、コワーキングのノートPCでもそのまま叩ける。

スマホ(iPhone / Android)のChromeでもスキル機能は使えるのか?

2026年5月時点では、スキル機能はデスクトップ版Chrome限定になる。日本のiOS版ChromeではGemini in Chrome自体が未提供であり、Android版Chromeでのスキル対応も現時点では確認できていない。

ChatGPTやClaudeにも同じような機能はあるのか?

ChatGPTには「カスタム指示(Custom Instructions)」、Claudeには「Projects」のシステムプロンプトがある。ただしいずれもブラウザのサイドパネルから「今見ているページ」に対してワンクリックで実行する仕組みではない。ブラウザ統合型のプロンプト保存機能としては、Gemini in Chromeのスキルが現時点で独自のポジションに立つ。

プリセットスキルを編集・カスタマイズすることはできるのか?

chrome://skills/browse からプリセットスキルを複製し、プロンプト文面を自分用に書き換えることが可能になる。「Explain simply」を複製して出力言語を日本語に固定したバージョンを作る、といったカスタムが効く。

参考文献