結論から言う。Zoomの有料プラン(Workplace Pro)を解約してGoogle Meetに一本化するのは、条件さえ揃えば合理的な判断だ。ただし「解約したら録画データが30日で消える」「Google Meetの無料版には録画機能がない」など、移行前に確認しておかないと詰む落とし穴がいくつかある。

筆者自身、ChatGPT・Claude・Geminiの3サービス併用で月額約9,000円を払いながら「本当に全部要るのか」と棚卸しした経験がある。SIer時代にもベンダーの保守契約で「月額据え置き」のリリースを真に受けたら、実はサポート範囲が狭まっていてオプション費用が膨らんだ失敗を踏んだ。ツールの乗り換え判断は、表面の月額だけでなく「何を失うか」を先に洗い出すのが鉄則である。

この記事では、2026年5月時点のZoomとGoogle Meetの料金・機能差を整理し、移行前に確認すべき5つのポイントを順に解説する。

ZoomとGoogle Meetの料金比較——月額差はいくらか【2026年5月時点】

まず数字で整理する。

プラン月額(税別・年払い)会議時間参加人数録画
Zoom Basic(無料)¥040分(グループ)100人ローカルのみ
Zoom Workplace Pro¥1,999/ホスト30時間100人クラウド5GB
Google Meet(無料)¥060分(3人以上)/ 24時間(1対1)100人なし
Google Workspace Business Starter¥800/ユーザー24時間100人なし
Google Workspace Business Standard¥1,600/ユーザー24時間150人クラウド(Google ドライブ保存)

Zoom Workplace Proの年払い月額¥1,999に対し、Google Workspace Business Starterは¥800。録画不要なら月額差は¥1,199である。年間で約¥14,400の削減になる計算だ。

ただし録画が必要な場合、Google側はBusiness Standard(¥1,600/月)以上が必要になる。この場合、Zoomとの月額差は¥399まで縮まる。録画を使うかどうかで判断が分かれるのはここだ。

移行前に確認すべき5つのポイント

解約してから「しまった」と思っても遅い。以下を順にチェックする。

1. クラウド録画データは解約後30日で削除される

これが最大の落とし穴だ。Zoomの公式ヘルプによれば、有料プランを解約するとBasicプランに自動移行し、クラウドストレージへのアクセスが停止する。停止から30日後にクラウド上の録画データは完全削除される。

解約前に必ずやること——Zoomの管理画面「Recording」から過去の録画を全件ダウンロードしておく。数が多い場合はブラウザのダウンロードが途中で止まることがあるので、数件ずつ分けて保存するのが確実だ。

2. Google Meetの無料版には録画機能がない

Zoomでは無料のBasicプランでもローカル録画ができる。一方、Google Meetの無料版には録画機能が一切ない。Google公式ヘルプによれば、録画にはGoogle Workspace Business Standard以上のプランが必要である。

Business Starter(¥800/月)では録画できない。ここを見落とす人が多い。

無料でどうしても録画したい場合の代替手段は後述する。

3. ブレイクアウトルーム・ウェビナーはGoogle Meetにない(または制限あり)

Zoomのブレイクアウトルーム(小グループ分け機能)は、セミナーや研修で多用されている機能だ。Google Meetにも2024年から類似機能が実装されたが、Google Workspace Business Standard以上のプランに限定される。無料版やBusiness Starterでは使えない。

また、Zoomの「ウェビナー」機能(視聴者と登壇者を明確に分ける大規模配信)に相当する機能は、Google Meetには存在しない。セミナー配信を定期的に行っている場合、Google Meetへの完全移行は難しいと判断する。

4. 会議URLの形式と参加方法が変わる

Zoomは専用アプリのインストールを求められる場面がまだ多い。一方、Google MeetはブラウザだけでURLをクリックすれば参加できる。この点はGoogle Meet側の優位だ。

ただし注意点がある。Googleアカウントを持っていない参加者は、会議主催者がゲスト参加を許可する設定にしていないと入室できない。社外の取引先やクライアントを招待する場合、事前にこの設定を確認しておくこと。Zoomは会議IDとパスコードさえあれば誰でも入れる仕組みなので、ここの運用差は意識しておく必要がある。

5. Googleカレンダー連携は圧倒的にGoogle Meetが強い

すでにGoogleカレンダーで予定管理をしている場合、Google Meetとの連携は強力である。カレンダーの予定作成時に「Google Meetのビデオ会議を追加」をクリックするだけで、会議URLが自動生成される。予定の時刻になればカレンダーから1クリックで入室できる。

ZoomもGoogleカレンダー連携は可能だが、Zoom for Google Workspaceアドオンの追加インストールが必要だ。ネイティブ統合のGoogle Meetには及ばない。

逆にOutlook / Microsoft Teamsがメインの環境では、Google Meetの恩恵は薄い。自分の業務環境がGoogle寄りかMicrosoft寄りかで判断が変わるポイントである。

Google Meetで「録画できない」を解決する3つの方法

録画はZoomからの移行で最もネックになる部分だ。Google Meet無料版・Business Starterで録画するための代替手段を整理する。

方法1: OS標準の画面録画を使う(無料)

Windowsなら「Snipping Tool」の画面録画機能(Windows 11 22H2以降)、MacならQuickTime Playerの「新規画面収録」で会議画面をそのまま録画できる。ファイルはローカル保存になる。

欠点は明確だ。自分の画面に映っている映像しか録れないので、ギャラリービューで全員の顔を録りたい場合は、事前に表示モードを切り替えておく必要がある。音声は内部音声キャプチャの設定が必要で、Macの場合は追加ソフト(BlackHoleなど)を入れないとマイク音声しか録れないケースがある。

方法2: Google Workspace Business Standardに上げる(¥1,600/月)

録画が業務に必須であれば、素直にBusiness Standardに上げるのが最も確実だ。録画はGoogleドライブに自動保存され、会議終了後にリンクが参加者に共有される。Gemini AIによる自動文字起こし・要約機能も2026年5月時点でStandard以上に含まれている。

Zoom Workplace Pro(¥1,999/月)との月額差は¥399。録画+文字起こし+Googleドライブ2TBのストレージを考えると、費用対効果はGoogle側が上回ると判断する。

方法3: サードパーティの会議録画サービスを使う

tl;dv、Otter.ai、Notta、torunoなど、Web会議の録画・文字起こしに特化したサードパーティサービスを併用する方法もある。これらはGoogle Meet・Zoom両方に対応しているものが多く、無料枠でも月数回程度の録画が可能だ。

※ 筆者はtl;dvの無料枠を検証したが、録画の画質・音声品質は実用レベルだった。ただし無料枠の制限(月間の録画時間上限など)はサービスごとに異なるので、本格運用前に公式の料金ページで確認すること。

Zoom解約の手順——データを失わないための3ステップ

実際の解約手順を整理する。

ステップ1: クラウド録画を全件ダウンロード

Zoomにログイン → 左メニュー「レコーディング」→「クラウドレコーディング」から、過去の録画を1件ずつダウンロードする。一括ダウンロード機能はないので、件数が多い場合は時間がかかる。外付けSSDやGoogleドライブに保存しておくと安全だ。

ステップ2: 定例会議のURLをGoogle Meetに差し替える

Zoomの定例ミーティング(繰り返し設定)を使っている場合、参加者にURLが変わることを事前通知する。Googleカレンダーで新しい定例会議を作成し、Google MeetのURLを貼り直すだけだが、周知漏れがあると当日混乱する。

動かないと意味がない——筆者は移行テストとして、まず社内の週次ミーティング1本だけをGoogle Meetに切り替え、2週間運用してから全面移行した。いきなり全会議を切り替えるより、小さく試して問題を洗い出す方が結果的に速い。

ステップ3: Zoomのサブスクリプションを解約する

Zoomのアカウント設定 →「プランの管理」→「プランをキャンセル」で解約できる。年払いの場合、契約期間の途中で解約しても日割り返金はない。契約更新日の直前に解約するのがコスト面では最適だ。

App Store / Google Play経由で課金している場合は、Zoom側ではなくストア側のサブスクリプション管理画面から解約する必要がある。ここでハマる人が多いので注意すること。

結局どっちがいい?——判断フローチャート

以下の条件で判断するのが最もシンプルだ。

  • ウェビナー・大規模配信をやる → Zoom継続一択。Google Meetに代替機能がない
  • 録画が必須 + Google Workspace未導入 → Zoom Proを維持するか、Google Workspace Business Standard(¥1,600/月)を新規導入するかの比較になる
  • 録画不要 + Googleカレンダーを日常使い → Google Meet無料版で十分。Zoom有料プランは解約して問題ない
  • 録画不要 + 月1〜2回しかWeb会議しない → Google Meet無料版(60分制限)で足りる。Zoom無料版(40分制限)より20分長い
  • すでにGoogle Workspace Business Starter以上を契約中 → Google Meetが含まれているので、Zoomの有料プランは二重課金の可能性が高い。棚卸しを推奨する

筆者の結論としては、Google Workspaceを業務で使っている環境であれば、Zoom有料プランの解約は合理的な判断である。逆にMicrosoft 365環境がメインであれば、Google MeetよりもMicrosoft Teamsへの統合を検討した方がよい。ツール選定は「どのエコシステムに寄せるか」で決まる。

FAQ

Zoomを解約したら過去の会議チャット履歴も消える?

クラウド保存のチャット履歴は、Basicプランへの移行後もアカウントが残っている限り閲覧可能だ。ただしクラウド録画は30日で削除されるため、録画に紐づくチャットログが必要な場合は事前にダウンロードしておくこと。

Google Meetの無料版で60分を超える会議はできない?

3人以上の会議は60分が上限で、時間になると自動的に切断される。1対1の通話であれば最大24時間まで利用可能だ。60分では足りない場合は、一度退出して再入室するか、Google Workspace有料プランを検討する必要がある。

ZoomとGoogle Meetを併用し続けるのはあり?

ありだ。Zoomを無料のBasicプランに落として、40分以内の打ち合わせやローカル録画が必要な場面だけZoomを使い、それ以外はGoogle Meetにする運用も現実的である。完全にどちらかに寄せる必要はない。

Google Meetの音質・画質はZoomと比べてどう?

2026年5月時点では、通常のブロードバンド環境であれば体感差はほぼない。Google Meetは2024年以降、ノイズキャンセリングや低照度補正などの機能がBusiness Standard以上で利用可能になっている。Zoomの方が帯域制御の最適化で一日の長があるとされるが、一般的なWeb会議の用途で差を感じることは少ないと判断する。

参考文献