「仕事で使っていたパソコンが壊れたから処分した。でも確定申告のとき、帳簿を見たらまだ資産として残ってる……これ、どうすればいいの?」

実はこれ、個人事業主やフリーランスが確定申告でめちゃくちゃつまずきやすいポイントです。固定資産に計上したものは、物理的に捨てただけでは帳簿から消えません。「除却(じょきゃく)」という会計処理をしないと、いつまでも帳簿に残り続けてしまうんです。

この記事では、固定資産の除却とは何か、具体的な仕訳の書き方、freeeやマネーフォワードでの操作手順までまるっと解説します。「仕訳のやり方がわからないからAIに聞いた」という声もSNSで見かけますが、この記事を読めばAIに聞かなくても自分でサクッと処理できるようになりますよ。

そもそも「除却」って何?廃棄とどう違うの?

まず用語を整理しましょう。ここがあいまいだと仕訳で混乱します。

用語意味具体例
廃棄物理的にモノを捨てること壊れたPCをリサイクル業者に出す
除却帳簿上で資産を消す会計処理固定資産台帳からPCを除外し、仕訳を切る
売却第三者に売って手放すことメルカリで中古PCを売る

ポイントは、「廃棄」と「除却」はセットで行うということ。モノを捨てたら(廃棄)、帳簿からも消す(除却)。この2つをセットでやらないと、帳簿に「もう存在しない資産」がずっと残ることになります。

逆に言えば、物理的にはまだ手元にあるけど事業で使わなくなった場合も除却できます。これを「有姿除却(ゆうしじょきゃく)」と呼びます。ただし税務調査で「本当に使ってないの?」と指摘されるリスクがあるので、廃棄と同時に除却するのが一番安全です。

除却の仕訳はこう書く!パターン別に解説

除却の仕訳は、その資産の減価償却がどこまで進んでいるかで書き方が変わります。ここでは個人事業主が最もよく遭遇する3パターンを紹介します。

パターン①:償却が終わった資産を除却する(備忘価額1円が残っている)

減価償却が完了した資産には、帳簿上「1円」だけ残っています。これを備忘価額(びぼうかがく)と呼びます。この場合の仕訳はとてもシンプルです。

借方金額貸方金額
雑費(または固定資産除却損)1円工具器具備品1円

たった1円なので、勘定科目は「雑費」でOK。わざわざ「固定資産除却損」を使う必要はありません。

パターン②:償却の途中で除却する(まだ帳簿価額が残っている)

たとえば、2024年に20万円で買ったパソコン(耐用年数4年・定額法)を、2026年の途中で廃棄したケースを考えてみましょう。

計算の流れ:

  • 取得価額:200,000円
  • 年間償却費:200,000円 × 0.250 = 50,000円
  • 2024年・2025年の2年間で償却済み:100,000円
  • 2026年分の期中償却費(1月〜除却月まで):たとえば6月に除却なら 50,000円 × 6/12 = 25,000円
  • 帳簿価額(未償却残高):200,000円 − 100,000円 − 25,000円 = 75,000円

仕訳はこうなります(直接法の場合):

借方金額貸方金額
減価償却費25,000円工具器具備品100,000円
固定資産除却損75,000円

ここでの固定資産除却損75,000円は経費になります。つまり、まだ償却が終わっていない資産を除却すると、残りの帳簿価額を一気に経費にできるんです。これは知っておくとおトクなポイントですね。

パターン③:廃棄に費用がかかった場合

パソコンのリサイクル料金や、大型機器の撤去費用がかかった場合は、その費用も除却損に含めます。

借方金額貸方金額
固定資産除却損75,000円工具器具備品75,000円
固定資産除却損3,000円現金(または事業主借)3,000円

リサイクル料金などの処分費用も経費計上できるので、領収書は必ず保管しておきましょう。

会計ソフト別の操作手順(freee・マネーフォワード)

「仕訳の書き方はわかったけど、会計ソフトでどうやるの?」という方のために、主要な会計ソフトでの操作を説明します。

freee会計の場合

  1. 「固定資産台帳」を開く:メニューから「決算 → 固定資産台帳」を選択
  2. 対象の資産を選択:除却したい資産の行をクリック
  3. 「処理」→「除却」を選択:除却日を入力(実際に廃棄した日付)
  4. 「除却の仕訳を作成する」にチェック:これを入れると自動で仕訳が作られます
  5. 保存:仕訳帳で自動計上された除却仕訳を確認

注意点:期中の日付で除却する場合、月締めの解除が必要になることがあります。また、freeeでは「除却」と「削除」は別物です。「削除」すると固定資産と償却仕訳ごと消えてしまうので、必ず「除却」を選んでください。

マネーフォワード クラウド確定申告の場合

  1. 「固定資産台帳」を開く:メニューから「決算・申告 → 固定資産台帳」を選択
  2. 対象の資産の「編集」をクリック
  3. 「売却・除却」タブを選択:除却日と除却理由を入力
  4. 仕訳の自動作成を確認:除却損の勘定科目が正しいかチェック
  5. 保存して仕訳を確認

マネーフォワードでは直接法と間接法を選べます。個人事業主は直接法が一般的なので、特に理由がなければ直接法でOKです。

弥生会計(やよいの青色申告)の場合

  1. 「固定資産一覧」を開く
  2. 対象資産を選択し「除却」をクリック
  3. 除却日・除却事由を入力
  4. 仕訳が自動作成される

どの会計ソフトも基本的な流れは同じで、「固定資産台帳 → 除却 → 仕訳自動作成」の3ステップです。

除却するときに必ず残すべき「証拠書類」

税務調査で「本当に除却したの?」と聞かれたとき、仕訳だけでは証拠になりません。廃棄の事実を証明する書類を必ず保管しておきましょう。

  • 廃棄証明書:リサイクル業者や廃棄業者が発行する書類
  • マニフェスト(産業廃棄物管理票):産業廃棄物として処分した場合
  • リサイクル券の控え:パソコンのリサイクル時に発行される
  • 廃棄時の写真:処分前に撮影しておくと安心
  • 処分費用の領収書:費用がかかった場合の証拠になる

特にパソコンの場合は「PCリサイクルマーク」が付いていればメーカーに無料で回収してもらえますが、そのときの申込確認メールや受領確認なども保存しておくのがベターです。

除却を忘れていた!過去の分はどうする?

「去年廃棄したのに除却するのを忘れてた……」というケースも意外と多いです。この場合はどうすればいいのでしょうか?

結論:気づいた年度で除却処理をすればOKです。

ただし、いくつか注意点があります。

  • 除却損を経費にできるのは、実際に廃棄した年度:本来は廃棄した年の経費なので、過去の確定申告の修正(更正の請求)が必要になる場合があります
  • 更正の請求は5年以内:5年を超えると修正できません
  • 金額が小さい場合は、今年度で処理しても実務上問題になりにくい:備忘価額1円だけなら、税務署も指摘しないのが一般的です

判断に迷う場合は、税務署の無料相談や税理士に確認するのがおすすめです。

よくある質問(FAQ)

Q. 10万円未満のパソコンも除却が必要ですか?

A. 10万円未満で購入した場合は「消耗品費」として一括で経費処理しているはずなので、固定資産台帳に載っていません。したがって除却の仕訳は不要です。除却が必要なのは、固定資産として計上した(10万円以上の)ものだけです。

Q. 壊れたパソコンを家族にあげた場合はどうなりますか?

A. 事業用の資産をプライベートに転用した場合は、「家事消費」として扱います。仕訳は「事業主貸 / 工具器具備品」となり、帳簿価額分を事業主貸に振り替えます。除却損にはなりませんが、帳簿からは消えます。

Q. 除却したら消費税の処理はどうなりますか?

A. 廃棄による除却の場合、消費税は「不課税」です。対価を受け取っていないので課税対象外になります。ただし、売却の場合は課税売上になるので注意してください。免税事業者の方は特に気にする必要はありません。

Q. 一括償却資産(20万円未満)を途中で廃棄した場合は?

A. 一括償却資産(3年均等償却を選択した場合)は、途中で廃棄しても3年間の均等償却を続けるのが原則です。途中で除却損を計上することはできません。ただし、青色申告の少額減価償却資産の特例(30万円未満)で一括経費にした場合は、そもそも固定資産台帳に載らないので除却処理は不要です。

Q. 除却と売却、どちらがトクですか?

A. ケースバイケースですが、帳簿価額が残っている資産は除却の方が節税になることが多いです。売却すると売却代金が収入になりますが、除却なら残りの帳簿価額がまるごと経費(除却損)になります。ただし売れるものを捨てるのはもったいないので、売却代金と節税効果を比較して判断しましょう。

参考文献