「iDeCoの掛金上限が上がるらしいけど、自分はいくらまで増やせるの?」「10年ルールって何?損するの?」――2026年12月に施行されるiDeCoの大改正は、会社員・自営業・公務員すべてに影響する制度変更です。

FP相談でよく聞かれるのが「結局、自分の場合はどうなるの?」という質問。改正内容は多岐にわたるので、この記事では2026年4月時点で確定している変更点を、職業別にわかりやすく整理しました。

iDeCo 2026年12月改正の全体像――何がどう変わる?

2024年12月に成立した改正確定拠出年金法により、2026年12月1日から(実際の掛金引落は2027年1月26日分から)iDeCoの制度が大幅に拡充されます。主な変更点は以下の5つです。

  • 掛金の上限額が大幅に引き上げ(会社員は最大月6.2万円、自営業は月7.5万円)
  • 加入可能年齢が70歳未満まで延長(現行は原則65歳未満)
  • 企業型DCとの併用制限が緩和(iDeCo単体の上限2万円の撤廃)
  • マッチング拠出の事業主掛金超過制限が撤廃(2026年4月〜)
  • 退職所得控除の「5年ルール」が「10年ルール」に変更(2026年1月〜)

つまり、「入口」は大幅に広がる一方で、「出口」の税制は厳しくなるという二面性があります。ここが今回の改正の最大のポイントです。

【職業別】掛金上限はいくらに上がる?改正前後の比較表

結論から言うと、もっとも恩恵が大きいのは「企業年金なしの会社員」です。以下の表で改正前後を比較してみましょう(2026年4月時点の情報です)。

第1号被保険者(自営業・フリーランス)

項目改正前改正後(2027年1月〜)
iDeCo上限(国民年金基金等との合算)月6.8万円月7.5万円

国民年金基金や付加保険料に加入している場合は、それらとの合計で月7.5万円が上限です。iDeCo単体で見ると、年間で最大8.4万円ぶん枠が増える計算になります。

第2号被保険者(会社員・公務員)

企業年金の状況改正前改正後(2027年1月〜)
企業年金なし月2.3万円月6.2万円(約2.7倍)
企業型DCのみ月2.0万円企業型DCと合算で月6.2万円
DB(確定給付)あり月1.2万円DB掛金等と合算で月6.2万円

企業年金のない会社員は、月額2.3万円から6.2万円へと約2.7倍に増えます。年間の所得控除額に換算すると、最大で年74.4万円。所得税率20%の人なら、節税効果だけで年間約14.9万円(住民税10%を含む)になる計算です。

第3号被保険者(専業主婦・主夫)

項目改正前改正後
iDeCo上限月2.3万円月6.2万円

ただし第3号被保険者は所得がない場合が多く、所得控除のメリットが限定的です。「将来の受け取り額を増やしたい」という目的なら検討の価値はありますが、無理に上限まで拠出する必要はありません。

加入年齢が70歳まで延長――誰が対象になる?

現行制度ではiDeCoの加入上限は原則65歳未満ですが、改正後は70歳未満まで加入できるようになります。ただし条件があります。

  • 第1号被保険者:国民年金の任意加入被保険者であれば65歳以降も加入可能(最大70歳未満)
  • 第2号被保険者(会社員・公務員):厚生年金に加入していれば70歳未満まで加入可能
  • 第3号被保険者:60歳以降は第3号の資格を失うため、引き続き加入するには第1号または第2号の資格が必要

副業の確定申告で実際に詰まった経験から言うと、「加入できる」と「加入すべき」は別の話です。65歳以降は受給開始年齢との兼ね合いもあるので、ご自身の退職金やつみたてNISAの状況と合わせて判断してください。

要注意!退職所得控除の「5年ルール」が「10年ルール」に改悪

今回の改正で見落としがちなのが、2026年1月1日からすでに適用が始まっている「10年ルール」です。これはiDeCoの「出口」に関わる重要な変更で、受け取り方次第で数十万円の税負担が変わります。

「5年ルール」と「10年ルール」の違い

iDeCoの一時金を受け取ると「退職所得」として扱われ、退職所得控除が適用されます。この控除は、会社の退職金にも使われます。問題は、両方を受け取る場合に控除枠が重複してしまうことです。

項目改正前(〜2025年12月)改正後(2026年1月〜)
iDeCo一時金→退職金の間隔5年空ければ控除枠が再利用可能10年空けないと控除枠が再利用できない

たとえば「60歳でiDeCoの一時金を受け取り、65歳で会社の退職金を受け取る」計画だった人は、5年間隔では控除枠が調整されるため、退職金にかかる税金が増える可能性があります。

対策は?

FP相談の現場でも、この「10年ルール」に関する問い合わせが増えています。主な対策は3つです。

  1. 受取順序を逆にする:退職金を先にもらい、10年以上空けてからiDeCoを一時金で受け取る(退職金→iDeCoの順であれば従来どおり5年ルールが適用)
  2. iDeCoを年金受取にする:一時金ではなく「年金」として分割受取にすれば、退職所得ではなく雑所得扱いになるため、退職所得控除の重複問題を回避できる
  3. 一時金と年金の併用:一部を一時金、残りを年金で受け取る「併給」を活用する

なお、退職金→iDeCoの順番で受け取る場合は、iDeCo側が「前年以前14年以内」に他の退職所得がないかを確認します。こちらは従来どおり5年ルールのままです(改正されたのは「iDeCo→退職金」の順番のみ)。

改正前に今やっておくべき3つの準備

掛金上限の引き上げは2027年1月引落分からですが、手続きの受付は2026年9月から始まります。今のうちに以下を確認しておきましょう。

1. 自分の企業年金の状況を確認する

会社員の方は、勤務先に「企業型DC」「確定給付企業年金(DB)」に加入しているかを確認してください。人事部や総務部に聞けばわかります。この情報がないと、改正後にいくらまで拠出できるかが計算できません。

2. 現在の掛金額と家計のバランスを見直す

「上限が上がったから全額入れよう」は危険です。iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、生活防衛資金(生活費の6か月分が目安)を確保したうえで、無理のない範囲で増額を検討しましょう。筆者も自分の家計Excelテンプレートで毎月のキャッシュフローを確認してから掛金額を決めています。

3. 出口戦略を今から考える

「10年ルール」の影響は、退職金の金額や退職時期によって大きく異なります。50代以降の方は特に、iDeCoと退職金の受取順序・受取方法を今からシミュレーションしておくことをおすすめします。

国税庁「退職所得」のページで退職所得控除額の計算方法を確認できます。

FAQ

iDeCoの掛金上限の引き上げはいつから適用されますか?

2026年12月1日施行で、実際の掛金引落日としては2027年1月26日分から新しい上限額が適用されます。書面での事前受付は2026年9月1日から開始予定です。

「10年ルール」はすでに始まっていますか?

はい。退職所得控除の「5年→10年」への変更は、2026年1月1日以降に支払われる退職一時金から適用されています。iDeCoの一時金を先に受け取り、10年以内に会社の退職金を受け取る場合が影響を受けます。

主婦(第3号被保険者)もiDeCoの掛金を月6.2万円にできますか?

制度上は月6.2万円まで拠出可能になります。ただし、所得がない場合は掛金の所得控除メリットを受けられないため、つみたてNISAなど引き出し自由な制度を優先したほうがよいケースもあります。

企業型DCに加入していますが、iDeCoも併用できますか?

改正後は、企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金の合計で月6.2万円以内であれば併用可能です。従来あった「iDeCoは月2万円まで」という個別上限は撤廃されます。

iDeCoの掛金を増やすと、ふるさと納税の上限額は変わりますか?

はい。iDeCoの掛金は全額所得控除になるため、課税所得が下がり、ふるさと納税の控除上限額もわずかに下がります。掛金を大幅に増やす場合は、ふるさと納税のシミュレーションもやり直すことをおすすめします。

参考文献