前職のIT推進部で800名規模のTeams Premium導入を主導したとき、文字起こし機能を週3回以上使ったユーザーは全体の12%だった。結局ライセンスを縮小した。2026年4月22日にGA(一般提供)されたMicrosoft 365 Copilotの「Agent Mode」が、6月のBuild 2026発表を経てデフォルト有効で全ライセンスユーザーに展開された今、同じ轍を踏みかけている組織は多いはずだ。
Word・Excel・PowerPointを開いた瞬間、Copilotペインが「エージェントモード」で立ち上がる。管理者が何も触れていなければ、今この瞬間も全ユーザーが使える状態だ。Copilotライセンスは1ユーザーあたり月30ドル(約4,500円)。使われなければ、その金額がそのまま機会費用になる。
Agent Modeとは何か、Coworkとの違い
Agent Modeは、Word・Excel・PowerPointの中でCopilotが複数ステップの操作を連続実行する機能だ。従来のCopilotは「この段落を要約して」のような単発指示だったが、Agent Modeでは「この報告書のデータを基にExcelで表を作り、PowerPointの3ページ目に貼り付けて」といった横断的な指示に応じる。
Cowork(2026年6月GA)は別物だ。Coworkはバックグラウンドで自律的にタスクを実行するエージェントで、Copilotクレジットという従量課金が発生する。Agent ModeはCopilotライセンス内で追加費用なし。ここが判断の分かれ目になる。
| 項目 | Agent Mode | Cowork |
|---|---|---|
| 対象アプリ | Word / Excel / PowerPoint | Microsoft 365全般(バックグラウンド) |
| 追加費用 | なし(Copilotライセンス内) | Copilotクレジット従量課金 |
| 操作タイプ | 複数ステップの文書編集 | 自律タスク実行 |
| デフォルト状態 | 有効(2026年6月〜) | 管理者が有効化する必要あり |
| 管理対象 | Copilotライセンス保持者全員 | クレジット支出上限の設定が必要 |
管理センターでAgent Modeの状態を確認・制御する手順
Microsoft 365管理センターでの操作は5分で終わる。以下の手順で確認できる。
- Microsoft 365管理センターにグローバル管理者でサインイン
- 左メニューから「Agents」→「Settings」→「User access」を選択
- 現在の設定を確認する。デフォルトは「All users」(全ユーザーがエージェント機能にアクセス可能)
- 制限する場合は「Specific users/groups」を選択し、対象のセキュリティグループを指定
- 「Allowed agent types」で「Allow apps and agents built by Microsoft」がオンになっているか確認する
FP相談でよく聞かれるのが「どこまで制限すべきか」だが、ツールの場合も同じだ。全面禁止は現場の反発を招く。まず現状の利用率を把握してから判断する方が合理的だ。
利用率で判断する「展開すべきか」の損益分岐
ROIで見ると、Agent Modeの追加費用はゼロだ。ただしCopilotライセンスそのものが月30ドル/ユーザーかかっている以上、「Copilotを契約しているのに使われていない」状態が問題になる。
Microsoftの公式ブログ(2026年4月22日付)によれば、Agent Mode導入後のExcel週間利用率は+67%、満足度は+65%上昇したとされる。ただしこれはアーリーアダプターのデータだ。
筆者がコンサル先で見てきた実態はもっと厳しい。前職でNotionのPlusプランを800名に展開したとき、半年後のアクティブ率は40%にとどまった。SaaSの全社展開でアクティブ率40%を超えないツールは、段階的に絞るべきだ。
| 週間利用頻度 | 判断 | 対応 |
|---|---|---|
| 週3回以上 | 継続 | Copilotライセンス維持、Agent Mode有効のまま |
| 週1〜2回 | 保留 | 60日後に再計測。トレーニング実施を検討 |
| 月数回以下 | 縮小候補 | ライセンスをパワーユーザーに集約 |
50名規模の組織で全員にCopilotを配った場合、月額は30ドル×50名=1,500ドル(約22.5万円)。年間270万円だ。週3回以上使う社員が12%しかいなければ、実質的に使っているのは6名。6名分のライセンス(月180ドル=約2.7万円)で済む計算になる。年間で差額約238万円。規模で線を引けという話だ。
全社展開で空振りしないための確認手順
Agent Modeの有効・無効を気にする前に「Copilotライセンスの配り方」を見直す方が先だ。Agent Mode自体は追加費用ゼロなので、ライセンスを持っている人に対して制限する必要性は低い。
問題は「ライセンスを持っているが使っていない人」だ。確認手順は以下の通り。
- Microsoft 365管理センター→「レポート」→「使用状況」→「Microsoft 365 Copilot」でユーザー別の利用回数を確認
- 60〜90日間のデータを取得し、週3回未満のユーザーを抽出する
- 該当ユーザーに15分のオンボーディング(「Agent Modeでこう使うと週30分浮く」の具体例提示)を実施
- オンボーディング後30日で再計測。改善しなければライセンスをパワーユーザーに集約
この手順は、筆者がコンサル先50名規模の会社でChatGPT有料プランの棚卸しをしたときと同じフレームワークだ。個人課金12名のうち週3回以上使っていたのは5名だけで、残り7名は無料プランかGeminiに切り替えて年間約25万円のコスト削減につながった。AIツールの利用率は、他のSaaSと同じ「40%問題」が起きる。
FAQ
Agent Modeをオフにしても既存のCopilot機能(単発の要約・生成)は使えるか?
使える。Agent Modeは複数ステップの連続操作機能であり、従来のCopilot機能(単発の質問応答・要約・文章生成)はAgent Modeの有効・無効に関係なく動作する。管理センターのAgents設定はエージェント機能のみを制御する。
Agent Modeの利用状況をユーザー別に確認する方法はあるか?
2026年7月時点では、Microsoft 365管理センターの「レポート」→「使用状況」→「Microsoft 365 Copilot」からユーザー別の利用頻度を確認できる。Agent Mode単体の利用回数は「Copilot活動の詳細」レポートに含まれる。データの保持期間は最大180日だ。
個人向けMicrosoft 365(Personal / Family)でもAgent Modeは有効か?
有効だ。2026年4月22日のGA以降、Microsoft 365 Personal、Family、および新しいPremiumプランのユーザーにもAgent Modeはデフォルトで提供されている。個人利用の場合はライセンス管理の問題は発生しないため、そのまま使えば追加コストは発生しない。
Agent Modeを一部ユーザーだけに先行展開するにはどうすればよいか?
Microsoft 365管理センターの「Agents」→「Settings」→「User access」で「Specific users/groups」を選び、先行展開用のセキュリティグループを指定する。たとえば「Copilot-Pilot」というグループに営業部の5名だけを入れておけば、その5名だけがAgent Modeを使える状態になる。60日後に利用率を計測し、週3回以上のユーザーが多ければ対象グループを拡大する流れが現実的だ。
参考文献
- Copilot's agentic capabilities in Word, Excel, and PowerPoint are generally available — Microsoft 365 Blog, 2026-04-22
- Agent settings in Microsoft 365 admin center — Microsoft Learn, 2026
- Create files with Word, Excel, and PowerPoint Agents in Microsoft 365 Copilot — Microsoft Learn, 2026
- Manage Microsoft 365 Copilot Scenarios — Microsoft Learn, 2026






