副業でスマホやWi-Fiを使っているなら、その通信費の一部は経費にできます。ただし「全額OK」ではなく、プライベートと仕事の使用割合で分ける「家事按分(かじあんぶん)」という計算が必要です。
FP相談でよく聞かれるのが「スマホ代って経費にしていいんですか?」という質問。結論から言うと、副業で使っている分だけなら経費にできます。ただし按分の割合や根拠を間違えると、税務調査で否認されるリスクもあります。この記事では、2026年4月時点の情報をもとに、通信費の家事按分の考え方・計算方法・確定申告での書き方をわかりやすく解説します。
そもそも「家事按分」って何?副業の通信費が全額経費にならない理由
家事按分(かじあんぶん)とは、プライベートと事業の両方で使っている支出を、事業で使った割合だけ経費に計上する方法です。たとえばスマホの月額料金が8,000円で、そのうち仕事に使っている割合が30%なら、8,000円 × 30% = 2,400円だけが経費になります。
これは国税庁が定める「必要経費」の考え方に基づいています。所得税法第37条では、事業所得の計算上、「その年の総収入金額に係る売上原価その他その総収入金額を得るため直接に要した費用の額」を必要経費に算入できるとしています。つまり、プライベートで動画を見たりSNSをしたりしている分は「事業に直接必要な費用」ではないので、経費にはできません。
ざっくり言うと、「仕事で使った分だけ経費にしてね」というルールです。そしてその「仕事で使った分」を計算するのが家事按分というわけです。
副業で経費にできる通信費の具体例と勘定科目
副業で経費にできる通信費には、以下のようなものがあります。勘定科目はすべて「通信費」で仕訳します。
- スマホの月額料金(基本料金+通話料+データ通信料)
- 自宅のインターネット回線(光回線・ホームルーター)
- モバイルWi-Fiルーターのレンタル料
- 副業用に契約したクラウドストレージ(Google One、iCloud+など)
- 副業の連絡に使うアプリの有料プラン(Zoom、Slackなど)
ただし注意点があります。副業専用で契約しているスマホ回線やWi-Fiがある場合は、家事按分は不要で全額経費にできます。逆に、プライベートと兼用している場合は必ず按分が必要です。
筆者も独立1年目にカフェ代を全額経費にしようとして税理士friendに「食事代が混ざってると全額否認される可能性がある」と指摘されたことがあります。通信費も同じで、「全部仕事に使ってます」は通りません。プライベート利用が少しでもあるなら、きちんと按分しましょう。
家事按分の割合はどう決める?3つの計算方法と具体例
家事按分の割合に「◯%まで」という明確なルールはありません。大切なのは、税務署に聞かれたときに「なぜこの割合なのか」を客観的に説明できることです。通信費でよく使われる3つの計算方法を紹介します。
方法1: 使用時間で按分する(もっとも一般的)
1日のうち副業にスマホやPCを使っている時間の割合で計算します。
【計算例】
スマホの月額料金: 8,000円
1日のスマホ使用時間: 6時間
うち副業に使っている時間: 2時間
按分率: 2時間 ÷ 6時間 = 約33%
経費にできる額: 8,000円 × 33% = 2,640円/月
方法2: 使用日数で按分する
週に何日副業をしているかで計算します。平日は本業、土日に副業をしている人に向いています。
【計算例】
Wi-Fiの月額料金: 5,500円
副業をしている日数: 週2日(土日)
按分率: 2日 ÷ 7日 = 約29%
経費にできる額: 5,500円 × 29% = 約1,595円/月
方法3: 通話明細・通信量で按分する(精度が高い)
キャリアの通話明細やデータ通信量の内訳から、副業関連の通話・通信の割合を算出します。手間はかかりますが、税務調査で最も説得力があります。
【計算例】
月の通話時間合計: 300分
うち副業の取引先・クライアントへの通話: 90分
按分率: 90分 ÷ 300分 = 30%
どの方法でも、「合理的な根拠がある」ことが最低条件です。なんとなく「50%くらいかな」で決めてしまうと、税務調査で否認されるリスクがあります。
確定申告での書き方 — 青色・白色で違いはある?
家事按分した通信費は、確定申告書の「収支内訳書」(白色申告)または「青色申告決算書」の経費欄「通信費」に記入します。按分後の金額(事業使用分のみ)を記載すればOKです。
青色申告と白色申告で家事按分のルール自体に大きな違いはありませんが、実務上の判断基準に差があります。
- 青色申告: 事業に関連する部分を「合理的に」按分すればよい(所得税法施行令第96条)
- 白色申告: 「主たる部分」が事業用であることが要件とされていた時代もありますが、2026年現在は青色と同様に合理的な按分が認められています
つまり、どちらの申告方法でも「合理的に説明できる按分率」を設定して、その根拠を残しておくことが重要です。
クラウド会計ソフトを使えば按分計算は自動
freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトを使っていれば、家事按分の設定は一度登録するだけ。筆者はfreeeを使っていますが、毎週金曜の午後にその週のレシートをスマホで撮影して取り込む習慣をつけています。1週間分なら5〜10枚程度で10分もかかりません。
freeeでの設定手順(3ステップ):
- 画面左メニュー「確定申告」→「家事按分」をクリック
- 「新しい家事按分を登録」で勘定科目に「通信費」を選択
- 「事業利用比率(%)」に算出した按分率を入力して保存
品目タグを使えば、「スマホ代=30%」「Wi-Fi代=40%」のように項目別に別々の比率を設定することもできます。確定申告時に自動で按分計算してくれるので、手計算のミスも防げます。
税務調査で否認されないために — 証拠の残し方3つ
家事按分で最も大切なのは、「なぜその割合にしたのか」の根拠を残すことです。以下の3つを意識してください。
1. 按分率の計算根拠をメモに残す
「1日6時間スマホを使用、うち2時間は副業のライティング作業とクライアント連絡 → 按分率33%」のように、計算のもとになった数値と理由をメモしておきましょう。Excelやスプレッドシートにまとめておくと安心です。
2. 通話明細・利用明細を保管する
キャリアのマイページからダウンロードできる通話明細やデータ通信量の明細は、PDFで保存しておきましょう。確定申告の帳簿と一緒に7年間保管する義務があります(青色申告の場合)。
3. 副業専用のアプリ・ツールは分けて記録する
Zoomの有料プランやクラウドストレージなど、副業でしか使わないサービスは、按分せず全額経費にできます。ただし「仕事専用」であることを説明できるよう、契約内容やアカウント情報を控えておきましょう。
FAQ
副業のスマホ代は何%まで経費にできる?
「◯%まで」という上限はありません。使用時間や使用日数など客観的な基準で算出した按分率であれば、税務署に認められます。一般的には20〜50%程度で申告するケースが多いですが、実態に基づいた割合を設定することが重要です。
プライベートのスマホ1台しか持っていなくても経費にできる?
はい、できます。副業専用の回線を持っていなくても、家事按分でプライベートと事業の使用割合を分ければ、事業利用分を経費に計上できます。ただし按分の根拠(使用時間の記録など)は必ず残しておきましょう。
家事按分の割合は毎年変えてもいい?
はい、副業の稼働状況が変わったなら、按分率を見直して変更しても問題ありません。ただし、大幅に変動する場合は「なぜ変わったのか」の理由を説明できるようにしておきましょう(例: 副業の稼働日数が週2日から週4日に増えたなど)。
副業が赤字のとき、通信費の按分は意味がある?
副業所得が「事業所得」として認められる場合は、赤字を給与所得と損益通算できるため、通信費の経費計上にも意味があります。ただし「雑所得」の場合は損益通算ができないため、赤字でも他の所得から差し引くことはできません。事業所得か雑所得かの判断基準については、帳簿の有無が重要なポイントです。
Wi-Fiルーターの本体購入費も経費にできる?
はい、副業で使用するWi-Fiルーターの購入費も経費にできます。購入金額が10万円未満であれば「消耗品費」として一括で経費計上でき、10万円以上の場合は「工具器具備品」として減価償却が必要です。プライベート兼用なら、こちらも家事按分の対象になります。
参考文献
- 家事按分とは?個人事業主が知っておくべき経費計上の仕方や計算方法についてわかりやすく解説 — freee会計, 2026年閲覧
- No.2210 やさしい必要経費の知識 — 国税庁タックスアンサー
- スマホや携帯電話代は経費にできる?個人事業主の場合は?仕訳と勘定科目まとめ — マネーフォワード クラウド会計
- 家事按分を登録する — freeeヘルプセンター
- 按分とは?確定申告での家事按分の割合の決め方や仕訳方法 — 弥生株式会社






