結論から書く。Zoom・Teams・Google Meetの3サービスとも、無料プランのAI文字起こしは「リアルタイム字幕の表示」が上限だ。会議後にテキストを保存して議事録に使う、AIで要約する、といった機能は有料プランに入らないと使えない。

筆者は前職で800名規模のMicrosoft 365を運用しており、Teams Premiumの導入検討資料を3度書き直した。あのとき痛感したのが「文字起こし機能は、スペック表ではなく議事録にかけている時給で判断するものだ」ということだった。機能比較だけで導入すると、結局12%のユーザーしか使わずライセンスを縮小する羽目になる。

3サービスの無料プランで「できること」と「できないこと」

無料枠の実態から確認する。

機能Zoom Basic(無料)Teams 無料版Google Meet 無料版
リアルタイム字幕○(日本語対応)○(ライブキャプション)○(日本語は2025年3月〜)
字幕テキストの保存×××
トランスクリプト(全文記録)×××
AI要約・アクション項目×××
クラウド録画×××

3サービスとも、無料プランで得られるのは「会議中に画面下に出る字幕」だけだ。字幕のテキストデータは保存できず、会議が終われば消える。議事録に使うなら、字幕を見ながら手でメモを取るか、外部の文字起こしツールを併用するしかない。

有料プランの料金とAI文字起こし機能の差

有料プランに入ると何が変わるか。2026年6月時点の料金で並べる。

項目Zoom ProTeams(M365 Business Basic)Google Workspace Business Standard
月額(年契約・税抜)¥1,999/ホスト¥899/ユーザー ※7月から¥1,050¥1,600/ユーザー
月額(月契約・税抜)¥2,549/ホスト対応なし¥1,900/ユーザー
トランスクリプト(全文記録)
AI要約○(AI Companion)△(Copilotは別途契約)○(Gemini自動メモ)
話者識別
クラウド録画

注目すべき点が2つある。

1つ目。ZoomのAI Companion(会議要約・アクション項目の自動生成)がPro以上のプランに追加料金なしで含まれている点だ。従来は上位プラン限定だったが、現在はProでも使える。「文字起こし+AI要約」を1つのプラン内で完結させるなら、コスト面では最も分かりやすい選択肢と判断する。

2つ目はTeamsの変動要因だ。2026年6月時点ではBusiness Basicでトランスクリプト(全文記録)が使える一方、AI要約にはMicrosoft 365 Copilotの追加ライセンス(月額約4,497円/ユーザー)が別途かかる。ただし2026年7月の価格改定で、Business Standard以上にCopilot Chat機能が統合される予定。Teamsで文字起こし+AI要約を使いたいなら、7月以降の新料金体系が出そろってから判断するのが合理的だ。

Google Workspace Business Standardは、Geminiによる自動メモ生成がプラン内に含まれており、月¥1,600(年契約)で文字起こしからAI要約まで一貫して使える。すでにGoogle Workspaceを契約中であれば、Business StarterからStandardへのアップグレード差額だけで済む。

「有料化すべきライン」を時給換算で計算する

ここからが判断の本丸だ。

議事録を手書き(手入力)で作成する時間を、業務時給で金額に換算する。筆者は自分の業務時給を8,000円で計算しているが、一般的なオフィスワーカーの場合は時給1,500〜2,000円で見るのが妥当だろう。

計算式はシンプルだ。

月間の議事録作成コスト = 1回あたりの作成時間 × 月の会議回数 × 業務時給

これがツールの月額を超えていれば、有料化は合理的と判断できる。

具体例を出す。1回の会議議事録に30分、月に8回の会議がある場合。業務時給1,500円で計算すると、

0.5時間 × 8回 × 1,500円 = 6,000円/月

Zoom Proの月¥1,999と比べても、損益分岐は余裕で超えている。では最低ラインはどこか。

Teamsの場合、Business Basicが月¥899(2026年6月時点)で最安だ。時給1,500円で逆算すると、月36分以上を議事録の手書きに使っているなら有料化の元が取れる。月に4回会議があって1回9分以上議事録を書いていれば、その時点で損益分岐を超える。

月36分を下回るチームのほうが少ないだろう。つまり「週1回以上の定例会議があるチームなら、文字起こし機能のために有料プランへ移行する判断は数字上成り立つ」と言い切れる。

チーム規模で判断が分かれるポイント

個人や2〜3人のチームなら、最安のTeams Business Basic(月¥899)かZoom Pro(月¥1,999)のどちらかで十分だ。選び方は単純で、ふだん使っている会議ツールに合わせればいい。ツールを乗り換える学習コストと設定移行の手間のほうが高くつく。

10名以上のチームでは、すでに契約しているグループウェアに合わせるのが鉄則だ。Microsoft 365ユーザーならTeamsのトランスクリプト、Google Workspaceを契約済みならBusiness Standardへのアップグレードが最短ルートになる。会議ツールだけ別サービスを新規導入すると、ライセンス管理の手間が増えるだけで機会費用が発生する。

筆者がコンサル先の50名規模のスタートアップでSaaS棚卸しをした際、Google WorkspaceのOAuth連携済みアプリが40本以上見つかった事例がある。会議ツールを「機能が良さそうだから」で追加すると、知らないうちにSaaSの二重契約が積み上がっていく。既存の契約内で解決できないかを最初に確認すべきだ。

外部AI文字起こしツールという選択肢もある

ZoomやTeamsの有料プランに上げずとも、外部のAI文字起こしツール(Notta、Otter.ai、スマート書記など)を会議に同席させる方法もある。無料枠が月数時間用意されているサービスも存在する。

ただし注意点が2つ。1つは、会議に「ボット」が参加する形になるため、社外との会議では相手への事前説明が必要になること。取引先によっては断られるケースがある。もう1つは、議事録データが外部サービスのサーバーに保存される点だ。情報セキュリティポリシーが厳しい企業ではそもそも承認が下りない。

コスト面だけ見れば外部ツールのほうが安い場合もある。だが運用上のハードルまで含めたトータルコストで判断すべきだ。筆者の経験では、50名以上の組織で外部文字起こしツールを全社導入するより、既存プランのアップグレードで済ませるほうが管理工数を含めた総コストは低い。数字は2026年6月時点のもので、プラン改定があれば再計算が必要になる。

FAQ

Zoom無料プランの字幕は日本語に対応している?

対応している。2022年9月からZoomの字幕機能は日本語をサポートしている。ただし無料プランでは字幕テキストの保存ができないため、会議終了後に文字起こしデータを取り出すことはできない。議事録用途には有料プランが必要だ。

TeamsのトランスクリプトとCopilotは何が違う?

トランスクリプトは「発言を時系列で全文記録する」機能で、Business Basic以上で使える。Copilotはそのトランスクリプトをもとに「要約・アクション項目を自動生成する」AI機能で、2026年6月時点ではCopilotライセンスの別途契約が必要だ。2026年7月の価格改定でBusiness Standard以上にCopilot Chat機能が統合される見込み。

Google Meetの文字起こしは日本語で実用レベル?

Google Meetの文字起こしは2025年3月に日本語対応した。話者が明瞭に話す環境ならおおむね実用レベルだが、複数人が同時に発言する場面や専門用語が多い会議では誤認識が増える傾向がある。会議後にテキストを目視で修正する前提で運用するのが現実的だ。

文字起こし目的で有料化する最低ラインは?

最安はTeams Business Basicの月¥899。時給1,500円換算で月36分以上を議事録の手書きに使っていれば損益分岐を超える。月に4回の定例会議で1回あたり9分以上議事録を書いているなら元が取れる計算だ。

参考文献