去年の夏、妻の同僚がハワイ旅行から帰ってきて「携帯の請求が8万円だった」と職場で騒ぎになったらしい。原因はデータローミング(海外で現地の回線を借りてデータ通信する機能)をオンにしたまま渡航し、地図アプリやSNSを普段どおり使ってしまったこと。聞いてみると、周囲でも「データローミングって何?」という人がほとんどで、設定を確認したことすらなかったそうです。

結論を先に言うと、出発前にスマホの設定を1か所変えるだけで、この高額請求は防げます。そして現地でネットを使いたい場合も、eSIM(物理カード不要のデジタルSIM)や海外Wi-Fiレンタルなど、手頃な選択肢がちゃんとあります。

「データローミング」がオンだと何が起きるのか

ふだん日本で使っているスマホは、ドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイルなど契約中のキャリアの電波で通信しています。ところが海外に行くと、日本のキャリアの電波は届きません。

ここで「データローミング」がオンになっていると、スマホは自動的に現地の通信会社の回線に接続し、日本のキャリア経由でデータ通信を始めます。問題は料金です。NTTドコモの公式サイトによると、海外パケット定額に未加入のままローミングすると、1日あたり最大2,980円の定額が適用されるケースもあれば、対象外エリアでは1KBあたり数円、気づかないうちに数万円に膨らむケースもあります。

筆者自身、以前の海外旅行で痛い目に遭いました。現地SIMに差し替えた瞬間、日本の電話番号に届くはずのSMS認証コードが受け取れなくなり、Instagramにログインできないまま旅行中ずっと使えなかったんです。データローミングだけでなく、認証まわりの準備も出発前にやっておかないと詰むことを身をもって知りました。

出発前にやるべき設定(iPhone)

iPhoneの場合、データローミングは初期設定でオフになっていることが多いですが、過去の渡航時にオンに切り替えたまま戻し忘れている人もいます。念のため確認しておきましょう。

  1. 「設定」アプリを開く
  2. 「モバイル通信」をタップ
  3. 「通信のオプション」をタップ
  4. 「データローミング」がオフ(灰色)になっていることを確認する

もし画面に「通信のオプション」が見つからない場合は、「モバイル通信」の画面で使用中の回線名(「主回線」や「個人」など)をタップすると表示されることがあります。デュアルSIMを使っている場合は、回線ごとに確認してください。

あわせて確認しておきたいのが、アプリのバックグラウンドデータ通信です。データローミングをオフにしていれば問題ありませんが、万が一オンのまま渡航してしまった場合に被害を抑えるため、「設定」→「一般」→「バックグラウンド更新」で不要なアプリのバックグラウンド通信をオフにしておくと二重の安全策になります。

出発前にやるべき設定(Android)

Androidはメーカーによって画面の名前が微妙に違います。ここではPixelと、利用者の多いGalaxyの2パターンを紹介します。

Pixel / 標準Androidの場合

  1. 「設定」を開く
  2. 「ネットワークとインターネット」をタップ
  3. 「SIM」または「モバイルネットワーク」をタップ
  4. 「ローミング」がオフになっていることを確認する

Galaxyの場合

  1. 「設定」を開く
  2. 「接続」をタップ
  3. 「モバイルネットワーク」をタップ
  4. 「データローミング」がオフになっていることを確認する

もし違うメーカーのスマホを使っている場合は、設定アプリの検索窓で「ローミング」と入力すると、該当の設定画面に直接たどり着けることがほとんどです。

現地でネットを使いたいときの選択肢

データローミングをオフにしたら、海外ではWi-Fiに繋がない限りネットが使えません。でも地図も翻訳もLINEも使えないのは正直キツい。2026年7月時点で、主な選択肢は3つあります。

eSIM(デジタルSIM)を追加する

価格.comの2026年7月時点のeSIM比較によると、渡航先のeSIMを事前にスマホにインストールしておけば、到着後に切り替えるだけで現地回線が使えるようになります。物理SIMカードを差し替える必要がなく、日本の電話番号もそのまま残せるのが最大のメリットです。

料金の目安は、韓国3日間で500〜800円程度、ハワイ7日間で1,500〜2,500円程度。trifaAiraloといったアプリから、渡航先を選んで購入・インストールするだけです。

ただし注意点がひとつ。eSIMはデータ通信専用のプランがほとんどなので、現地の電話番号は付きません。通話やSMSが必要な場合は、LINEやFaceTimeなどのインターネット通話で代用するか、電話番号付きプランを選ぶ必要があります。

eSIM対応機種の確認:iPhoneはXS / XR(2018年モデル)以降、AndroidはPixel 4以降やGalaxy S20以降など。「設定」→「モバイル通信」(iPhone)や「設定」→「接続」→「SIMカードマネージャー」(Galaxy)にeSIMの項目があれば対応しています。

海外Wi-Fiルーターをレンタルする

グローバルWiFiやイモトのWiFiなどのサービスで、渡航先で使えるモバイルルーターを借りる方法です。1日あたり300〜1,500円程度で、空港のカウンターで受け取って帰国時に返却します。

家族やグループ旅行で1台を共有できるのがメリットですが、荷物が増える点と、ルーター自体のバッテリー管理が必要な点はデメリットです。知人の家族は「4人でシェアしたけど、ルーターのバッテリーが夕方に切れて迷子になりかけた」と言っていました。

キャリアの海外定額プランを使う

ドコモの「世界そのままギガ」、auの「世界データ定額」、ソフトバンクの「海外あんしん定額」など、各キャリアが提供する海外データ定額サービスを使う方法です。事前申し込みが必要な場合と不要な場合があるので、渡航前にキャリアのマイページで確認してください。

料金は1日980〜2,980円が相場で、eSIMやWi-Fiレンタルに比べると割高です。ただし設定がいちばん簡単で、日本の電話番号でそのまま通話やSMSもできるため、「細かい設定は苦手」という人には安心感があります。

どれを選べばいい?

方法料金目安(7日間)手軽さ向いている人
eSIM1,500〜2,500円★★★1人旅、スマホ操作に抵抗がない人
Wi-Fiレンタル2,100〜10,500円★★☆家族・グループ旅行でシェアしたい人
キャリア海外定額6,860〜20,860円★★★設定が苦手、通話・SMSも使いたい人

筆者のまわりでは、2024年頃からeSIM派が急増しています。空港でSIMカードを買う列に並ぶ必要がなく、なくす心配もない。一度使うと物理SIMには戻れないという声をよく聞きます。

帰国後に忘れがちな「設定の戻し忘れ」

海外でeSIMやキャリア海外定額を使っていた場合、帰国後に設定を元に戻さないとトラブルになることがあります。

iPhoneの場合:「設定」→「モバイル通信」で、海外用eSIMの回線を「この回線をオフにする」に切り替え、日本のメイン回線がデータ通信に使われていることを確認してください。海外用eSIMを今後使わないなら「eSIMを削除」してしまっても問題ありません。

Androidの場合:「設定」→「ネットワークとインターネット」→「SIM」で、海外用SIMをオフにし、日本のSIMがデータ通信に選択されていることを確認します。

帰国してしばらくしてから「LINEの通知が来ない」「4Gに繋がらない」という症状が出た場合、海外用eSIMが有効なまま残っていてデータ通信の優先回線がそちらに向いている可能性があります。モバイル通信の設定を開いて確認してみてください。

出発前のチェックリスト

最後に、出発前に確認しておきたい項目をひとつにまとめておきます。

  1. データローミングがオフになっているか(iPhone:設定→モバイル通信→通信のオプション / Android:設定→ネットワーク→モバイルネットワーク)
  2. 現地でのネット手段を決めたか(eSIM購入・Wi-Fiレンタル予約・キャリア海外定額申込のいずれか)
  3. 二段階認証の準備はできているか(SMS認証だけに頼っている場合、現地SIMに差し替えると日本の番号にコードが届かなくなる。認証アプリへの切り替えやバックアップコードの印刷を済ませておく)
  4. オフラインで使える地図をダウンロードしたか(Googleマップの「オフラインマップ」機能で渡航先の地図を事前に保存しておくと、ネットが使えない場面でも経路検索ができる)
  5. クレジットカード会社に渡航予定を伝えたか(海外でのカード利用を不正利用と判定されて止められるケースがある。事前にアプリやWebから渡航届を出しておく)

ここまで準備しておけば、現地でスマホまわりのトラブルに巻き込まれるリスクはかなり減ります。もし違う画面が出たり、設定項目が見つからない場合は、お使いのキャリアのサポートページで「海外利用」と検索すると、機種ごとの案内が見つかるはずです。

FAQ

機内モードにすればデータローミングの心配はない?

機内モードをオンにすると、モバイルデータ通信・Wi-Fi・Bluetoothがすべてオフになります。この状態ならデータローミングは発生しません。ただし、機内モード中にWi-Fiだけ手動でオンにすることもできるので、ホテルや空港のWi-Fiは機内モードのまま利用可能です。到着後に「機内モードをオフにしたらデータローミングも復活するのでは」と心配する方もいますが、データローミング自体がオフになっていれば、機内モードを解除しても海外の回線には繋がりません。

eSIMと物理SIMカードは同時に使えるの?

iPhone XS以降やPixel 4以降など、デュアルSIM対応機種であれば、日本の物理SIM(またはeSIM)と海外用eSIMを同時に入れておくことができます。日本の電話番号で着信を受けつつ、データ通信だけ海外eSIMを使うといった設定も可能です。ただしこの場合、日本のSIMで着信すると国際通話料が発生する点には注意してください。

子どものスマホのデータローミングも確認すべき?

家族旅行の場合は、お子さんのスマホも同じように確認してください。特にゲームアプリのバックグラウンド通信は容量が大きく、データローミングがオンのまま渡航するとあっという間に高額になります。出発前に一緒に画面を確認するのがおすすめです。

格安SIM(MVNO)でも海外でデータローミングは使える?

2026年7月時点で、IIJmioやmineo、日本通信などの主要MVNOは海外データローミングに対応していないか、対応していても割高な従量課金です。格安SIMユーザーは、eSIMや海外Wi-Fiレンタルを別途用意するのが現実的な選択肢になります。ahamoは海外82の国・地域で追加料金なしでデータ通信が使えるので、海外旅行が多い方には選択肢として検討する価値があります。

参考文献