PCショップ時代、「パソコンが動かなくなって中のデータが全部消えた」という持ち込みは修理依頼のなかでもトップクラスに多かったんですよね。写真、仕事のファイル、子どもの動画。バックアップを取っていなかったお客さんの後悔を何十回と聞いてきた。
ただ、Windowsが起動しなくなったからといって、データが消えたわけじゃない。ストレージ(SSDやHDD)が物理的に壊れていなければ、中のファイルはまだ残っている可能性が高いんです。この記事では、Windowsに入れなくなったPCからデータを取り出す3つの方法を、実際の手順つきで紹介します。
ただし2026年現在、Windows 11では「デバイスの暗号化」がデフォルトで有効になっているPCが増えていて、これを知らずに作業を始めるとドライブにアクセスできず詰むことがある。まずそこから確認していきます。
最初に確認:「デバイスの暗号化」とBitLocker回復キー
Windows 11の24H2以降、多くのPCで「デバイスの暗号化」(BitLockerの簡易版)が自動で有効になっています。Microsoftの公式サポートページによると、この暗号化が有効な場合、別の環境からドライブにアクセスするには48桁の「回復キー」が必要になる。
回復キーの確認方法はシンプルで、別のPCやスマホからMicrosoftアカウントのデバイス管理ページにログインすれば表示されます。Microsoftアカウントでサインインしていたなら、ほぼ自動でクラウドにバックアップされているはず(ちなみに自分は工房の検証機すべてで回復キーをテキストファイルに控えて共有フォルダに置いている。アナログだけど結局これが一番確実だったりする)。
暗号化が有効かどうかわからない場合は、とりあえず回復キーを確認してから作業に入るのが安全です。キーがないまま進めると、ドライブは見えるのにファイルが読めないという状態になります。
方法1:Windows回復環境(WinRE)のコマンドプロンプトでコピーする
Windowsが起動しなくても、回復環境(WinRE)が生きていればコマンドプロンプトからデータをコピーできます。追加のツール不要で、外付けUSBメモリがあればすぐ試せるのが利点。
手順:
- 電源ボタン長押しで強制シャットダウンを2回繰り返す。3回目の起動時にWinREが立ち上がる
- 「トラブルシューティング」→「詳細オプション」→「コマンドプロンプト」を選択
- 外付けUSBメモリまたは外付けSSDを接続する
notepadと入力してメモ帳を起動し、「ファイル」→「開く」でドライブ文字を確認する(WinRE環境ではCドライブがDやEにずれることがある)- コマンドでコピーする:
xcopy D:\Users\ユーザー名\Documents E:\backup\ /E /H /C(DがWindows、EがUSBの例)
Microsoft LearnのWinREリファレンスにも記載があるとおり、WinREのコマンドプロンプトでは通常のWindowsとほぼ同じコマンドが使えます。
ぶっちゃけ、この方法が一番手軽なんです。ただしWinRE自体が破損していて起動しないケースもあるので、その場合は方法2に進んでください。
方法2:USBメモリにUbuntuを入れて起動し、データを取り出す
WinREがダメなら、別のOS(Ubuntu Linux)をUSBメモリから起動してデータを救出する方法があります。自分もPCショップ時代にこの手順で何台も対応してきたので、手順としては枯れたやり方。
用意するもの:
- 8GB以上のUSBメモリ(起動用。データ保存先とは別に1本必要)
- 動作する別のPC(ISOの書き込みに使う)
- データ保存用の外付けSSDまたはUSBメモリ
手順:
- 別のPCでUbuntu公式サイトからISOファイルをダウンロード(2026年5月時点ではUbuntu 24.04.x LTSが安定版としておすすめ)
- Rufusを使ってUSBメモリにISOを書き込む。パーティション構成は「GPT」、ファイルシステムは「FAT32」を選択
- 起動しないPCにUSBメモリを挿し、電源ON直後にF12(またはF2、Del)を連打してブートメニューを表示
- USBメモリを選択して起動し、「Try Ubuntu」(Ubuntuを試す)を選ぶ。インストールはしない
- デスクトップが表示されたら、ファイルマネージャーを開くとWindowsのドライブが左側に見える。データ保存用の外付けSSDも接続して、ドラッグ&ドロップでコピー
BitLockerで暗号化されたドライブの場合、クリックすると回復キーの入力を求められます。ここで先ほど確認した48桁の回復キーを入力すればアクセスできる。回復キーがわからないと、この方法でもデータは取り出せません。結局のところ、回復キーの事前確認がすべてのカギなんですよね。
方法3:ストレージを取り外して別のPCにUSB接続する
PCの筐体を開けられるなら、SSD(またはHDD)を物理的に取り外して、別のPCにUSB接続アダプタ経由でつなぐ方法もあります。
M.2 SSDなら「M.2 SSD外付けケース」(USB 3.2対応で2,000〜3,000円前後)、2.5インチSATAなら「SATA-USB変換ケーブル」(1,000円前後)があれば、外付けドライブとして別のPCで認識される。ノートPCでも底面パネルを外せる機種なら対応可能です。
ただし最近のノートPCはSSDが基板に直付けされていて取り外せないモデルもある。無理に分解するとメーカー保証が切れるリスクがあるので、保証期間内なら方法1か方法2を先に試すほうが賢明です(自分の工房では自作機ばかりなのでこの方法が一番手っ取り早いんですが、メーカー製PCだとそうもいかないので注意)。
3つの方法、どれから試す?
迷ったらこの順番で判断すると無駄がないです。
| 状況 | おすすめの方法 |
|---|---|
| WinREが起動する | 方法1(コマンドプロンプト)が最速 |
| WinREは起動しないが、USBブートはできる | 方法2(Ubuntu USB起動) |
| USBブートもできない・画面が映らない | 方法3(ストレージ取り外し) |
| ストレージが物理故障の疑い(異音・認識しない) | データ復旧業者に相談 |
ストレージの物理故障が疑われる場合、電源の入れ直しを繰り返すとかえって状態が悪化します。PCショップ時代にも、お客さんが何度も再起動した結果、本来は救えたデータが完全に読めなくなったケースを何件も見てきた。異音がしたらすぐ電源を切って、無理に自力でやろうとせず専門のデータ復旧業者に相談するのが鉄則です。
そもそもこういう事態を防ぐには、普段からバックアップを取っておくのが一番。外付けSSDとクラウド(OneDriveなど)の二段構えにしておけば、PCが起動しなくなっても慌てなくて済みます。
FAQ
BitLocker回復キーがどこにも見つからない場合、データは諦めるしかない?
Microsoftアカウントに紐づいていない場合や、ローカルアカウントのみで使っていた場合は、回復キーが保存されていないことがあります。暗号化されたドライブの中身にアクセスする方法は、回復キーなしでは現時点で存在しません。購入時のセットアップ資料やメーカーからの書類にキーが記載されているケースもあるので、まずそこを確認してみてください。
Ubuntu USBを作るとき、USBメモリの中身は消える?
はい、消えます。Rufusで書き込む際にUSBメモリの全データがフォーマットされるので、大事なデータが入っていないものを使ってください。容量は8GB以上が必要です。
自分のPCで「デバイスの暗号化」が有効かどうか、起動しない状態で確認できる?
起動しない状態からは直接確認できません。UbuntuのUSBで起動してWindowsドライブを開こうとしたとき、パスワードや回復キーの入力画面が出ればBitLockerが有効、そのまま中身が見えれば無効と判断できます。
データ復旧業者に頼むとどのくらい費用がかかる?
論理障害(ファイルシステム破損など)で3万〜10万円前後、物理障害(SSD/HDDの故障)で10万〜30万円以上が相場とされています。業者によって差が大きいので、まずは無料診断を実施している業者に相談するのがおすすめです。
参考文献
- BitLocker 回復キーの検索 — Microsoft サポート
- Windows 回復環境 (Windows RE) テクニカルリファレンス — Microsoft Learn
- 起動できなくなったWindowsのデータをUbuntuで取り出す — パソコン工房 NEXMAG
- Rufus — 起動可能なUSBドライブを簡単に作成 — rufus.ie
- WinREを使用してファイルをネットワーク共有にコピーする方法 — Dell サポート






