副業の経費をPayPayやクレジットカードで支払ったとき、「紙の領収書がないけど大丈夫?」と不安に思ったことはありませんか。FP相談でよく聞かれるのが、まさにこの「電子決済した経費の保存ってどうすればいいの?」という疑問です。
結論から言うと、2024年1月から電子帳簿保存法の「電子取引データ保存」が完全義務化されており、PayPayの利用明細やクレジットカードのWeb明細など、電子的にやり取りした取引データは電子データのまま保存することが必須です。紙に印刷して保存する方法は原則として認められなくなりました。
この記事では、副業をしている方が押さえておくべき電子帳簿保存法の基本ルールと、PayPay・クレジットカード明細の正しい保存方法を、実践的な手順とあわせて解説します。
そもそも電子帳簿保存法の「電子取引」って何?副業でも対象になるの?
電子帳簿保存法は、税務関係の帳簿や書類をデータで保存するためのルールを定めた法律です。このうち副業をしている方に直接関係するのが「電子取引データの保存」という区分です。
ざっくり言うと、メールやWeb上で受け取った請求書・領収書・利用明細は、紙に印刷せず電子データのまま保存しなさいというルールです。2024年1月1日から完全義務化されており、2026年5月現在、猶予期間はすでに終了しています。
「副業の規模が小さいから関係ないのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトによれば、所得税の確定申告をする個人事業主やフリーランスはもちろん、雑所得として副業収入を申告する方も、電子取引データの保存義務の対象です(前々年の副業収入が300万円を超える場合に請求書等の保存義務が発生)。青色申告をしている方は金額にかかわらず対象になります。
PayPay・クレジットカードのWeb明細は「電子取引」に該当する
では、具体的にどんなデータが「電子取引」に当たるのでしょうか。副業でよくあるケースを整理します。
| 取引の種類 | 電子取引に該当? | 保存すべきデータ |
|---|---|---|
| PayPayなどQRコード決済の利用明細(アプリで確認) | 該当する | 利用明細のスクリーンショットまたはCSVダウンロード |
| クレジットカードのWeb明細 | 該当する | PDF明細のダウンロード、またはスクリーンショット |
| Amazonなど通販サイトの購入履歴・領収書 | 該当する | 領収書PDFのダウンロード |
| 店舗でクレカ払い→紙のレシートを受領 | 該当しない(紙の取引) | 紙のレシートをそのまま保存でOK |
| 紙で届くクレジットカード利用明細 | 該当しない(紙の取引) | 紙のまま保存でOK |
ポイントは「データで受け取ったか、紙で受け取ったか」です。同じクレジットカードの明細でも、紙で郵送されたものは紙のまま保存すればOK。一方、アプリやブラウザで確認するWeb明細は電子取引に該当し、データのまま保存が必要です。
井上寧税理士事務所の解説によれば、PayPayなどのスマホアプリによる決済で、アプリ提供事業者から受ける利用明細は電子取引に該当します。つまり、PayPayで副業の備品を買ったら、その利用明細のデータ保存が必要ということです。
クレジットカード利用明細だけでは「領収書の代わり」にならないケースがある
ここで注意したいのが、クレジットカードの利用明細と領収書は別物だという点です。
クレジットカードの利用明細には「日付・店名・金額」が記載されていますが、具体的な品目(何を買ったか)が記載されていないことがほとんどです。税務調査では「何を」「何のために」購入したかが問われるため、利用明細だけでは経費の証拠として不十分なケースがあります。
副業の確定申告で実際に詰まった経験から言うと、理想的な保存の組み合わせは次のとおりです。
- クレジットカード利用明細(Web明細PDF)+ 購入先から受け取った領収書や納品書(メールやPDFで届いたもの)
- PayPayの場合は利用明細のスクリーンショット + 購入先のレシート画像
要するに、「いつ・いくら払ったか」と「何を買ったか」の両方がわかる状態で保存しておくのが安全です。
電子取引データの保存で満たすべき3つの要件
電子帳簿保存法では、電子取引データを保存するときに以下の要件を満たす必要があります。難しそうに見えますが、副業レベルなら意外とシンプルに対応できます。
要件1: 改ざん防止措置
データが書き換えられていないことを証明する措置が必要です。具体的には、次のいずれかで対応します。
- タイムスタンプの付与(クラウド会計ソフトが自動でやってくれる)
- 訂正・削除の履歴が残るシステムで保存(freeeやマネーフォワードなどが該当)
- 「事務処理規程」を作成して運用する(コストゼロで対応可能)
副業規模であれば、「事務処理規程」の作成が最もハードルが低い方法です。国税庁がサンプルを公開しているので、自分の名前と日付を入れるだけで使えます。
要件2: 検索機能の確保
「日付」「金額」「取引先」で検索できる状態にしておく必要があります。
クラウド会計ソフトを使っている場合は、ソフト側の検索機能でクリアできます。ソフトを使わない場合は、ファイル名に「日付_取引先_金額」を入れてフォルダ管理する方法でもOKです。
例: 20260503_Amazon_3980.pdf
なお、国税庁の一問一答によると、前々年の売上が5,000万円以下の場合は検索要件が緩和されており、ダウンロード要求に応じられれば検索機能は不要です。副業の方はほぼこちらに該当するでしょう。
要件3: 見読可能性の確保
保存したデータを画面やプリンターで確認できる状態にしておくこと。パソコンやスマホで開ける一般的なファイル形式(PDF・JPEG・PNGなど)で保存していれば問題ありません。
副業の電子取引データを「ラクに」管理する実践3ステップ
ここからは、実際に副業の経費データをどう管理すればいいか、すぐ使える3ステップを紹介します。筆者は税理士friendに副業用と生活用で口座・カードを分けるよう助言されてから確定申告が劇的に楽になったのですが、電子帳簿保存法の対応も口座やカードを副業専用に分けておくと、保存すべきデータの範囲が明確になって管理がとてもラクになります。
ステップ1: 副業用の決済手段を分ける
副業の経費を支払うクレジットカードやPayPayアカウントを、プライベートと分けましょう。こうすることで「どの明細を保存すべきか」に迷わなくなります。
ステップ2: 週1回、明細データをダウンロードして保存する
筆者は毎週金曜の午後にFP相談が終わったあと、その週のレシートをスマホで撮影してfreeeに取り込む習慣をつけています。電子取引データの保存も同じタイミングで行うのがおすすめです。
- PayPay → アプリの取引履歴からスクリーンショットを撮影
- クレカWeb明細 → PDFをダウンロード
- Amazon等の通販 → 注文履歴から領収書PDFをダウンロード
freee公式ヘルプによると、freeeなどのクラウド会計ソフトを使っていれば、レシート画像をアップロードするだけで自動的にタイムスタンプが付与され、改ざん防止と検索機能の要件を同時にクリアできます。
ステップ3: クラウド会計ソフトを使わない場合はフォルダ管理+事務処理規程
会計ソフトを使わない方は、パソコンやGoogleドライブに以下のようなフォルダ構成で保存しましょう。
副業経費/2026年/01月/20260115_Amazon_1980.pdf
のように「年/月」フォルダの中に、「日付_取引先_金額.拡張子」というファイル名で保存します。加えて、国税庁のサンプルをもとに「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を1枚作成しておけば、改ざん防止措置の要件もクリアです。
保存しなかったらどうなる?ペナルティと税務調査のリスク
「ぶっちゃけ、保存していなかったらどうなるの?」という疑問もあるでしょう。
電子帳簿保存法に違反した場合、直接的な罰則(罰金など)は規定されていません。しかし、税務調査で電子取引データの保存が不十分と判断されると、その経費が否認される(経費として認められない)リスクがあります。
また、青色申告をしている場合、帳簿書類の保存要件を満たさないと青色申告の承認が取り消される可能性もゼロではありません。青色申告特別控除の65万円がなくなるのは、副業の手取りに大きく響きます。
2026年以降は猶予期間も完全に終了しているため、税務調査では保存状況が厳格にチェックされる傾向にあります。今のうちに保存ルールを整えておくのが安心です。
FAQ
PayPayの利用明細はスクリーンショットで保存すればOK?
はい、PayPayアプリの利用明細画面のスクリーンショットを保存する方法で対応できます。ただし「日付・金額・取引先」がわかるように撮影し、ファイル名を「日付_取引先_金額」の形式にしておくと検索要件も満たせます。
紙のレシートをスマホで撮影したデータも電子取引に該当する?
いいえ、該当しません。紙のレシートを受け取った取引は「紙の取引」であり、電子帳簿保存法の「電子取引」には当たりません。紙のまま保存するか、スキャナ保存制度を利用してデータ化するかを選べます。スマホ撮影でのデータ化は「スキャナ保存」の区分になり、電子取引とは別の要件が適用されます。
副業の売上が少額でも電子帳簿保存法の対象になる?
青色申告をしている方は金額に関係なく対象です。雑所得として申告する方は、前々年の副業収入が300万円を超える場合に請求書等の保存義務が発生します。ただし、金額に関わらず電子取引データの保存義務自体はすべての事業者に適用されるため、少額でも対応しておくのが安全です。
事務処理規程はどこで手に入る?
国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトにWord形式のサンプルが公開されています。個人事業者向けのテンプレートもあり、自分の名前と日付を入れるだけで使えます。
freeeやマネーフォワードを使っていれば何もしなくていい?
クラウド会計ソフトの証憑管理機能にデータをアップロードしていれば、改ざん防止(タイムスタンプ)と検索機能の要件は自動でクリアできます。ただし、「アップロードする」作業自体は自分で行う必要があります。明細やレシートデータを定期的に取り込む習慣をつけましょう。
参考文献
- 電子帳簿等保存制度特設サイト -- 国税庁
- 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】 -- 国税庁
- 電子帳簿保存法の概要・手続について -- freee ヘルプセンター
- 電子帳簿保存法でクレジットカードの利用明細・領収書はどう扱う? -- 経理プラス
- PayPayなどのスマホアプリによる決済データの電子取引該当性 -- 井上寧税理士事務所






