ハッキングされたわけではありません

先日、実家の母から「iPhoneのWi-Fiのところに'安全性の低いセキュリティ'って出てるんだけど、うちのWi-Fi乗っ取られたの?」と電話がありました。画面を確認すると、たしかにWi-Fi名の下に小さく警告文が出ています。母は不安そうでしたが、結論から言うと、これはハッキングでも乗っ取りでもありません。

この警告は、自宅のWi-Fiルーターが使っている暗号化方式(通信を他人に読まれないようにする仕組み)が古いとiPhoneが判断したときに表示されるものです。iOS 14(2020年9月リリース)以降のiPhoneで表示されるようになりました。

つまり「今すぐ危険」というより「セキュリティの規格が古いので、新しい方式に変えたほうがいいですよ」というiPhoneからのお知らせです。とはいえ放置するのもよくないので、自宅ルーターの設定を見直す方法を順番に説明していきます。

なぜこの警告が出るのか

Wi-Fiの暗号化方式にはいくつかの世代があります。ざっくり言うと、古い順に並べるとこうなります。

  • WEP(1999年〜):すでに数分で解読可能。使ってはいけない
  • WPA(TKIP)(2003年〜):WEPの改良版だが脆弱性あり
  • WPA2(TKIP):暗号方式が古いTKIPのまま
  • WPA2(AES):2026年現在でも十分安全。多くのルーターの標準設定
  • WPA3(2018年〜):最新の暗号化方式。対応ルーターが増加中

Appleの公式推奨設定ページでは、WPA3またはWPA2(AES)を使うことを推奨しています。iPhoneが「安全性の低いセキュリティ」と表示するのは、ルーターがWEP、WPA(TKIP)、WPA2(TKIP)のいずれかに設定されている場合です。

母の実家のルーターを確認したところ、7年前に購入したBuffalo製で、暗号化方式が「WPA2(TKIP/AES混合)」になっていました。TKIP混合モードもiPhoneは「安全性が低い」と判断します。

ルーターの暗号化設定を変更する手順

焦らなくて大丈夫です。設定変更は5〜10分で終わります。順番に進めていきましょう。

まず、ルーターの管理画面を開く

  1. iPhoneまたはパソコンのブラウザ(SafariやChrome)を開く
  2. アドレスバーに以下のいずれかを入力してアクセスする
    • Buffalo:192.168.11.1
    • NEC Aterm:192.168.10.1 または aterm.me
    • IO-DATA:192.168.0.1
    • TP-Link:192.168.0.1 または tplinkwifi.net
  3. 管理画面のユーザー名とパスワードを入力してログインする

もし管理画面のパスワードがわからない場合は、ルーター本体の底面や側面に貼られたシールに初期パスワードが書いてあることが多いです。母のルーターも底面のシールに書いてありました。

次に、暗号化方式を変更する

ルーターの管理画面に入ったら、「無線LAN設定」や「Wi-Fi設定」「セキュリティ設定」といった項目を探してください。メーカーによって名称が違いますが、中身はほぼ同じです。

  1. 「認証方式」または「セキュリティモード」の項目を探す
  2. 現在の設定が「WPA-PSK(TKIP)」「WPA/WPA2-mixed」などになっていたら変更する
  3. 「WPA2-PSK(AES)」または「WPA2/WPA3」に切り替える
  4. 設定を保存してルーターを再起動する

もしルーターがWPA3に対応している場合は「WPA2/WPA3」を選んでおくのがおすすめです。WPA3対応の新しい機器はWPA3で接続し、非対応の古い機器もWPA2で接続できるので、家族全員の端末が使えます。

2.4GHz帯と5GHz帯の両方でSSID(Wi-Fiの名前)を出しているルーターは、それぞれ個別に暗号化方式の設定が必要です。片方だけ変えて安心しないよう気をつけてください。

設定変更後にiPhoneで確認する方法

ルーターの設定を変えたら、iPhoneのWi-Fiを一度切断して再接続します。

  1. 「設定」→「Wi-Fi」を開く
  2. 接続中のWi-Fi名の右にある「i」マークをタップ
  3. 「このネットワーク設定を削除」をタップ
  4. Wi-Fi一覧に戻り、同じネットワーク名を選んでパスワードを入力し直す

再接続後、Wi-Fi名の下に「安全性の低いセキュリティ」の警告が消えていれば成功です。母のルーターでもこの手順で警告が消え、「こんなに簡単なら早くやればよかった」と言っていました。

もし設定を変えたのに警告が消えない場合は、iPhoneが古いネットワーク情報をキャッシュとして残していることがあります。上記のように「ネットワーク設定を削除」してから再接続すると、新しい暗号化方式で接続し直してくれます。

古いルーターでWPA2(AES)に変更できない場合

2015年以前に購入したルーターの中には、WPA2(AES)やWPA3に非対応のものがあります。管理画面に「WPA2(AES)」の選択肢が出てこない場合、残念ながらそのルーターでは暗号化方式のアップグレードができません。

フリーランス仲間とZoomしていたときにも同じ話題が出て、4人中1人が10年以上前のルーターをそのまま使っていました。セキュリティ面だけでなく、通信速度もWi-Fi 6対応の新しいルーターに比べるとかなり遅いので、買い替えを検討するタイミングかもしれません。

2026年6月現在、WPA3対応のWi-Fi 6ルーターは5,000円台から購入できます。Buffaloの公式サポートページIO-DATAの公式サポートページでも、古いルーターで警告が出る場合の対処法と買い替え目安が案内されています。

FAQ

「安全性の低いセキュリティ」と表示されていても、今すぐWi-Fiの使用をやめるべきですか?

すぐにやめる必要はありません。ただし、WPA(TKIP)やWEPのままだと通信内容を傍受されるリスクがあるため、できるだけ早くルーターの暗号化設定をWPA2(AES)またはWPA3に変更することをおすすめします。

Androidスマホでは同じ警告は出ないのですか?

Android 10以降でも、WEPやWPA(TKIP)のネットワークに接続すると警告が表示されることがあります。ただし表示のタイミングや文言はメーカーやOSバージョンによって異なります。

ルーターの暗号化方式を変えたら、家の中の他の機器が繋がらなくなることはありますか?

2010年以降に発売されたスマホ、パソコン、テレビ、ゲーム機はほぼすべてWPA2(AES)に対応しているので、問題なく接続できます。まれに古いプリンターやIoT家電がTKIPにしか対応していないことがありますが、その場合は「WPA2/WPA3混合モード」を選べば両方に対応できます。

カフェやホテルのWi-Fiでも「安全性の低いセキュリティ」と出ることがありますが、使っても大丈夫ですか?

公共のWi-Fiは暗号化方式が古い場合があり、自分では設定を変えられません。利用する場合はVPN(通信を暗号化するアプリ)を使うか、個人情報やパスワードの入力は避けて、閲覧だけにとどめるのが安全です。

参考文献