洗濯機の終了ブザーが鳴って、つい席を立った。干し終わったらシンクの食器が目に入って、気づいたら水切りカゴに並べている。「ちょっとだけ」のつもりだったのに、スマホのストップウォッチで1週間測ってみたら、仕事中に家事へ使っていた時間は1日平均42分だった。週5日で3時間半。半日分の仕事が毎週消えていた計算になる。
我が家は共働きで、夫の出社日は週4。在宅勤務の私が家事の大半を回す構造になっていて、「家にいるんだから合間にやれるでしょ」と自分でも思ってしまう。その思い込みが仕事時間を静かに削っていた。意志力で「やらない」と決めても、翌朝にはまたブザーが鳴る。結局、仕組みで止めるしかなかった。
ストップウォッチで1週間だけ測ってみた
きっかけは、副業の朝30分をホワイトボードで宣言して定着させた直後のことだった。朝の副業タイムは守れているのに、本業の仕事中に家事で中断される時間がぜんぜん減らない。「ちょっとだけ」が実際に何分なのか、数字で知りたくなった。
やり方は単純で、仕事中に家事に手を出したらスマホのストップウォッチを押す。戻ったら止める。それだけを1週間続けた。
結果は1日平均42分。多い日は55分を超えた。洗濯物干し、食器洗い、掃除機、宅配の荷物開封。どれも1回5〜10分の小さな中断なのに、積み上がると40分になる。株式会社ネクストレベルの調査(2021年)でも、テレワーク経験者の97.7%が「集中が切れた経験がある」と回答している。在宅勤務で集中が途切れること自体は珍しくないけれど、家事の中断だけで1日40分という数字は正直ショックだった。
数字を見た瞬間に「仕組みで止めないとまずい」と腹落ちした。感覚では「ちょっとだけ」でも、ストップウォッチは嘘をつかない。
「やらないことリスト」で罪悪感ごと消す
最初に試したのはToDoリストだった。でもやることを書き出しても「つい手を出す」行動は止まらなかった。
発想を逆にして、仕事時間中に「やらない」家事を書き出すリストを作った。項目は4つだけ。
- 洗濯物干し → 昼休みか仕事終了後に回す
- 食器洗い → 家事タイムに回す
- 掃除機がけ → ロボット掃除機に任せる
- 宅配の荷物開封 → 夕方の家事タイムで
書き出した瞬間に「やらなくていい」と自分に許可を出せるようになった。在宅勤務中の家事中断は、意志力の問題じゃなくて罪悪感の問題だった。「家にいるのにやらないのは怠けている」という気持ちが手を動かしていたので、リストで許可を出すだけで手が止まる。2〜3項目でも十分効果がある。
一人暮らしの場合も同じ仕組みは使えます。家族がいない分ホワイトボードの「外圧」効果は薄れますが、やらないことリストの効果はむしろ大きいかもしれません。外圧がないぶん、自分で自分に許可を出す仕組みが必要になるので。
家事タイムを朝・昼・夕方の3回に固定する
やらないことリストだけだと「じゃあいつやるの」が宙に浮く。家事タイムを「朝の仕事前」「昼休み」「仕事終了後」の3回に固定して、それ以外は家事に手を出さないルールにした。リビングのホワイトボードに書き出す。
ホワイトボードに書くのは我が家では定番で、終業時刻の宣言や送迎シフトにも使っている。書いてあると年中の長男が「今お仕事の時間でしょ」と教えてくれることもあって、子どもが外圧になるのは想定外だったけれど、かなり効いた。
洗濯機のタイマーも見直した。朝の洗濯を11時終了に設定して、干すのは昼休みに回す。終了ブザーが仕事時間中に鳴らないようにするだけで、「鳴ったから干さなきゃ」という反射がなくなった。花王「くらしの研究」の調査(2022年公開)でも、テレワーカーは仕事時間帯(8時〜18時台)に洗濯物干しや掃除をする頻度が増えているというデータが出ている。ブザーや視覚的なトリガーが仕事中に入ってくる環境そのものを変えないと、意志力だけでは止められない。
デスクの向きを変えてキッチンを視界から消した
3つ目は物理的な対策。デスクをリビングの壁向きに配置して、背中側にキッチンが来るレイアウトに変えた。
元の配置だと顔を上げるとシンクの洗い物が見えた。見えると気になる。気になると手が出る。このループを断ち切るには、見えなくするのがいちばん早い。突っ張り棒と布で簡易パーティションも追加したら、視界からキッチンが完全に消えた。3COINSの突っ張り棒と100均の布で合計600円くらい。
個室がある家庭ならドアを閉めれば済む話ですが、うちのような賃貸だとリビングにワークスペースを置くしかない。デスクの向きを変えるだけでも集中環境は作れるし、1歳の次男がいる日中はなおさら視界のコントロールが大事だと感じています。
3つを重ねたら週30分以下になった
やらないことリスト、家事タイム3回固定、デスク壁向き配置。3つを同時に導入して1ヶ月後、もう一度ストップウォッチで1週間測った。
仕事中の家事は、週3時間半から30分以下に減った。
個別の対策だけだと効果は限定的だったのに、組み合わせると変わった。罪悪感を消し、タイミングを固定し、視界を遮断する。3層で「手を出す理由」をつぶしていく構造が効いている。
夫にも同じ仕組みを渡したら、案外うまくいった。在宅勤務の日に夫がリビングで仕事をするときも、家事タイムのルールとデスクの向きはそのまま使っている。「1日40分」という数字を見せたら「それはまずいな」と納得してくれた。数字で見せると家族も動く。
全部やる必要はありません。まずストップウォッチで1週間だけ測ってみてください。数字を見ると「仕組みで止めないと」と自然に動けます。あなたの環境に合う仕組みはうちとは違うかもしれないけれど、「計測→仕組み化→家族で共有」の流れは、共働きでも一人暮らしでも使えるはずです。
FAQ
ストップウォッチの計測はどのアプリを使えばいいですか?
iPhoneやAndroidの標準時計アプリのストップウォッチ機能で十分です。ラップ機能を使えば中断ごとの時間も記録できます。専用アプリは不要で、1週間測るだけで傾向がつかめます。
一人暮らしでもこの仕組みは使えますか?
使えます。ホワイトボードの外圧効果は薄れますが、やらないことリストと家事タイム固定はそのまま適用できます。スマホのリマインダーで家事タイムの通知を出すのも有効です。
子どもが在宅の日は家事タイムを固定できないのでは?
保育園に通っている日中であれば固定しやすいです。休園日や夏休みなど子どもが在宅の日は「手抜き公認日」として柔軟にする運用が、うちでは続いています。完璧を目指さない日があっていい。
デスクの向きを変えるスペースがない場合はどうすれば?
デスクを動かせなくても、100均の目隠しシートや布をモニター横に立てるだけでキッチン方向の視界は遮れます。見えなくするだけで効果があるので、完璧な配置を目指さなくて大丈夫です。
参考文献
- 働き方でみる暮らしの実態調査 テレワークで変わる家事時間の使い方 — 花王 くらしの研究, 2022年4月公開
- 98%がテレワーク中の集中力低下を経験!アンケート対象の300人が実践し効果を感じた"集中力アップ"対策とは? — 株式会社ネクストレベル, 2021年
- 令和6年度 テレワーク人口実態調査 — 国土交通省, 2025年3月






