終業はPCのシャットダウンタイマーで切れるようになった。ホワイトボードに「18:00終業」と書いたら、年中の長男が「もう18時だよ!」と教えてくれるようにもなった。夜のダラダラ残業は仕組みの力でほぼ消えた。
ところが朝がまるでダメだった。9時始業のはずなのに、洗濯物を干してからコーヒーを入れて、なんとなくスマホのニュースを開いて、気づけば9時40分。パソコンを開いても「まず何やるんだっけ」と手が止まる。これが週に3回は続いていた時期がある。
通勤がない在宅勤務は、始業の区切りが自分の意志だけになります。意志で動かないのはもう実証済み。結局、朝も仕組みで動かすしかないと腹をくくって試したのが「フェイク通勤」と「5分メモ」の組み合わせです。2026年6月現在、うちではこの2つで朝の始業遅れがほぼなくなりました。
通勤がなくなると「始業」があいまいになる理由
オフィスに通っていたころは、電車に乗る、ドアをくぐる、デスクに座る。この物理的な動作が自動的にスイッチになっていました。在宅だとそのステップがぜんぶ消えます。
日本生産性本部が2025年7月に公表した「第16回 働く人の意識調査」によると、テレワーク実施者の79.5%が週1日以上は出社しています。裏を返せば、完全在宅の日は「切り替え装置」がないまま仕事に入ることになる。朝にだらだらしてしまうのは意志が弱いからではなく、切り替えの仕組みがないからです。
我が家では結局これに落ち着いたのですが、切り替えに必要なのは「体を動かす動作」と「最初の一手を決めておくこと」の2つだけでした。
近所を10分歩く「フェイク通勤」でスイッチを入れる
フェイク通勤というのは、始業前に家の周りを5分から10分歩いて戻ってくるだけのルーティンです。Forbes JAPANの記事でも「通勤の代わりになる朝の儀式が在宅勤務の生産性に効く」と紹介されています。
うちは札幌なので冬はさすがにキツい。でも雪のない時期は、保育園の送りのついでに帰り道を1ブロックだけ遠回りするようにしています。所要時間は片道5分の追加。送りが終わって帰宅したら、玄関でスニーカーを脱いだ瞬間に「はい、始業」と自分に言い聞かせています。
冬場は外に出なくても大丈夫です。代わりに「パジャマから着替える」「仕事用のカバンからPCと充電器を出してデスクに並べる」という動作だけで切り替えている時期もありました。ポイントは、体に「ここから仕事」と覚えさせる物理的な区切りを1つ決めること。何をするかより、毎日同じ動作を繰り返すことのほうが大事です。
夫にも同じルーティンを提案してみたら、案外すんなり乗ってくれました。夫は保育園送りの帰りにコンビニでコーヒーを1本買って帰宅、それを開けたら始業、という流れを「自分のフェイク通勤」にしています。形は違うけど、物理的な区切りがあるという点は同じです。
始業前の「5分メモ」で最初の一手を決めておく
フェイク通勤で体のスイッチが入っても、PCを開いた瞬間に「何から手をつけよう」と迷うと、結局メールやSlackの未読を眺める時間が始まります。あの時間、やっているようで何も進んでいません。
以前、保育園のお迎えコールに備えて「中断メモ」を仕組み化したことがありました。電話が来たら5分で「次の一手」を3行だけ書いて出発する。あれで再開時間が30分から15分に縮まった経験がヒントになりました。始業も同じ構造で、前日の終業時に「明日の朝いちばんにやること」をメモに1行書いておくと、翌朝の迷いがゼロになります。
書く場所はどこでも構いません。うちはリビングのホワイトボードの端っこに「明日朝イチ:〇〇の原稿の見出しを3本出す」みたいに書いています。ノートアプリでもいいのですが、ホワイトボードだと朝起きた瞬間に目に入る。PCを開く前に「今日はこれからだ」と決まるので、迷いの入る余地がありません。
全部やる必要はありません。書くのは1行だけ。「朝イチの5分で手をつけること」に絞るのがコツです。やることを1つに決めておくと、着席から作業開始までの空白時間が消えます。
ホワイトボードに始業時刻を書いて家族の外圧を味方にする
終業時刻をホワイトボードに書いたとき、長男が「もう18時だよ!」と声をかけてくれるようになった話は以前書きました。あの仕組みが始業にも使えると気づいたのは、連休明けにホワイトボードで「仕事再開」を家族に共有したときです。
「パパ 始業9:00 / ママ 始業9:15」とホワイトボードに書いておくだけ。保育園の送りから戻る時間にあわせて、15分ズラしています。書いたところで誰かに叱られるわけではないのですが、「9:15って書いてあるのにまだスマホ見てる自分」に気づくと、さすがに動けます。
朝の「5秒シェア」もこの流れに組み込んでいます。保育園の送り際に、玄関で「今日、午前は私が動ける。午後は夫ね」とお迎え担当を5秒で共有する。そのままフェイク通勤に出発して、帰宅したらホワイトボードの5分メモを見てPCを開く。この一連の動線が1本につながると、切り替えに意志力を使わなくて済みます。
一人暮らしの方やお子さんがいない方は、ホワイトボードの代わりにスマホのリマインダーで始業5分前に通知を入れる方法もあります。「9:10:あと5分で始業」と出るだけで、不思議と手が動き始めます。
自分に合う仕組みを1つだけ試してみる
うちの場合の朝の流れをまとめると、こうなります。
- 保育園送り(8:15出発)
- 帰り道を1ブロック遠回り=フェイク通勤(+5分)
- 帰宅、玄関でスニーカーを脱いだら始業モード
- ホワイトボードの「明日朝イチ」メモを確認
- PCを開いて、メモに書いたタスクに手をつける(9:15)
追加の所要時間は5分だけです。これで始業が40分遅れていたのが、ほぼ定時に揃うようになりました。意志力ではなく動線で解決する。在宅勤務の家事中断をストップウォッチで計測して仕組みで止めたときと、やっていることは同じです。
全部やる必要はありません。フェイク通勤だけでも、5分メモだけでも、始業時刻の宣言だけでも効果はあります。自分の生活に合うものを1つ選んで、まず1週間試してみてください。うちの場合はこれで落ち着いたけれど、家のつくりや家族構成で合うやり方は変わります。あなたの環境でうまくいく組み合わせを見つけるのがいちばん大事です。
FAQ
フェイク通勤は雨の日や冬でもやったほうがいいですか?
無理に外に出る必要はありません。うちは冬場、「着替え→カバンからPCを出す→デスクに座る」の3動作を通勤の代わりにしています。体を使った区切りが1つあればそれで十分です。
始業メモはデジタルと紙、どちらが向いていますか?
PCを開く前に目に入る場所に置けるなら、どちらでも大丈夫です。うちはホワイトボードですが、冷蔵庫に貼る付箋やスマホのウィジェットでも同じ効果がありました。自分が自然と見る場所に置くのがコツです。
子どもが小さくて朝のルーティンが安定しません
うちも次男が1歳で、朝は予定通りにいかない日のほうが多いです。始業が20分遅れた日は昼休みを短くする振替ルールを事前に決めておくと、遅れたこと自体にストレスを感じなくなります。完璧にこだわると続きません。
夫婦ともに在宅勤務の日、始業時刻をズラすメリットはありますか?
保育園の送り担当と始業可能な時刻は連動するので、ズラすほうが現実的です。ホワイトボードに2人分書いておくと、どちらが先に仕事を始めるかで揉めることもなくなりました。
参考文献
- 第16回 働く人の意識調査 — 公益財団法人日本生産性本部, 2025年7月
- 「フェイク通勤」が在宅勤務に効果的な理由 — Forbes JAPAN
- 在宅勤務のダラダラ解消法 始業前1時間の集中がカギ — 日本経済新聞





