夫婦で在宅勤務を始めて3年目、ふと気づいたことがある。昼の12時になると毎日のように「お昼どうする?」と夫に聞かれる。答えを考えている間に洗濯機の終了ブザーが鳴って、ついでに干して、冷凍うどんをレンジに入れて、食べ終わったら13時5分。休憩した実感がまるでない。
エデンレッドジャパンの調査(2022年)によると、リモートワーク中に約6割がランチ休憩時間の減少を実感し、67%が昼休み60分未満と回答している。昼休みは意識しないと勝手に縮む。
我が家では結局、昼食ルールを曜日で固定する方法に落ち着いた。日曜夜の家族会議で5分あれば決まる。ホワイトボードに書いて貼っておくだけで、毎日の交渉がゼロになった。
昼休みが消える原因は「交渉・家事・境界線」の3層
在宅勤務の昼休みが短くなる理由を、自分の1週間を振り返ってみた。原因は3つの層に分かれていた。
最初に目につくのが昼食の交渉コスト。夫婦で在宅の日、12時前になると「お昼どうする?」「冷蔵庫に何ある?」「買いに行く?」のやりとりが始まる。メニューを考えて、在庫を確認して、相手の希望を聞いて折り合いをつける。1回5分でも週5日で25分、月に換算すると100分以上を「昼食の相談」に使っていた計算になる。
次が家事の侵食。洗濯機の終了ブザーが12時15分に鳴ると、つい手が動く。干し終わったらシンクの食器が目に入って、拭いて戻して、気づけば12時40分。スマホのストップウォッチで1週間計測してみたら、昼休みに家事へ使っていた時間は平均18分だった。
3つ目が境界線の不在。オフィスなら12時にデスクを離れてエレベーターに乗り、コンビニまで歩く。この移動が休憩のスイッチになっていた。在宅勤務だと、Slackの通知を横目に冷凍パスタを食べている状態になりやすい。これは「休憩」ではなく「食事しながら仕事」に近い。
日本労働組合総連合会の「テレワークに関する調査2020」でも、テレワーカーの53.6%が「休憩時間がきちんととれない」と回答している。昼休みの喪失は、うちだけの問題ではなかった。
「月水金は各自、火木は一緒」で交渉がゼロになった
日曜夜の家族会議で夫に切り出したのは、「昼ごはんのルールを曜日で決めない?」というひと言だった。
決めた内容はシンプルで、月水金は各自、火木は一緒に食べる。リビングのホワイトボードに「月水金:各自 / 火木:一緒」と書いた。決定から運用開始まで2分もかからなかった。
「各自」の日は、冷凍食品でもカップ麺でもコンビニおにぎりでもOK。ここが大事で、「各自」と決めた瞬間に罪悪感が消えた。「手を抜いている」のではなく「今日は各自の日だから」と割り切れる。夫は納豆ごはん率が異様に高いけれど、それでいい。
「一緒」の日は、前日の残り物を温めるかパスタをゆでる程度にしている。凝った料理は作らない。一緒に食べること自体が目的であって、メニューの質は問わないルールにした。
この運用を始めて2ヶ月。「お昼どうする?」と聞かれた回数はゼロ。ホワイトボードに答えが書いてあるから、交渉自体が発生しない。先週の家族会議でも「昼のルール変える?」「いや、このままで」の2秒で終わった。毎日の小さな交渉の積み重ねがストレスの正体だったんだと、やめてみてはじめて気づいた。
昼休みから家事を追い出す「12時台は手を出さない」
曜日別ルールで昼食交渉はなくなった。でも家事の侵食はまだ残っていた。
対策は1行だけ。ホワイトボードに「12:00〜13:00 家事NG」と書き足した。洗濯機のタイマー設定を11時終了に変えて、干すのは午前の仕事前か13時以降にずらした。
「え、昼に干さなくて大丈夫?」と心配になるかもしれないけれど、夕方に干しても夜には乾く。全部やる必要はありません。昼休みの家事をゼロにする代わりに、仕事終了後の家事タイムに回しただけで、トータルの家事量は変わっていない。
ホワイトボードに「家事NG」と書いてあると、自分への許可になる。目の前にシンクの食器があっても「あ、今は12時台だからいいや」と流せるようになった。書いてあるかどうかで、罪悪感のかかり方がぜんぜん違う。
昼休みに「何もしない10分」を確保すると、午後の集中力が変わる。ソファに座ってスマホを触るだけでいい。食後にほんの少しぼーっとする時間が、在宅勤務では意外と贅沢で、意外と必要だった。
一人暮らし・子育て世帯ではこうアレンジする
曜日別ルールは夫婦向けの仕組みだけど、一人暮らしや子どものいる家庭でも応用できる部分がある。
一人暮らしの場合、「交渉」は発生しない。でも「何を食べるか毎日考える疲れ」は同じ構造の問題。曜日でメニューカテゴリだけ固定すると楽になる。月曜は麺類、火曜はごはんもの、水曜はパン系、という大枠だけ決めておけば、冷蔵庫を開けてから悩む時間が減る。
お子さんがいる家庭では、保育園や学校がある平日は気にならなくても、夏休みで子どもが家にいると昼食問題が一気に浮上する。うちの長男(年中)は去年のお盆休みに「今日のお昼なに?」攻撃がすごくて、初日だけで5回聞かれた。
そのとき試したのが、前夜に翌日の昼食をホワイトボードに一緒に書く方法。「明日はおにぎり」と長男が自分で書くと、翌日は聞いてこなくなった。夫に渡したら案外うまくいった仕組みが、子どもにも同じように効くとは思わなかった。
ちなみに厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」では、テレワーク中でも労働基準法の休憩時間規定(6時間超で45分以上、8時間超で60分以上)はそのまま適用されると明記されている。昼休みを削っているのは会社の指示ではなく、自分の習慣。だからこそ、仕組みで直せる。
FAQ
昼食を「各自」にすると食費は増える?
我が家の場合、各自デーの食費は1人あたり300〜500円程度。冷凍食品やレトルトを活用すれば外食より安く収まります。一緒に食べる日に前日の残り物を消化するので、トータルの食費はむしろ下がりました。
パートナーが「毎日一緒に食べたい」と言う場合はどうする?
まず1週間だけ「各自の日を週1日」から試してみるのがおすすめです。お互いの感想を次の家族会議で共有して、合わなければ戻せばいい。最初から完璧な分担を決める必要はありません。
在宅勤務の昼休みに散歩はしたほうがいい?
5分でも外に出ると午後のスイッチが入りやすくなります。うちでは保育園の送り帰りに1ブロック遠回りする「フェイク通勤」をやっていて、昼にも似た感覚で玄関の外に出るだけで切り替わる実感があります。
一人暮らしでも曜日ルールは意味ある?
メニューカテゴリを曜日で固定するだけでも「何を食べるか考える時間」が減ります。判断コストがゼロになる効果は一人暮らしでも同じです。
参考文献
- リモートワーク中は約6割の人がランチ休憩時間減少 — 株式会社エデンレッドジャパン, 2022年
- テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン — 厚生労働省
- テレワークに関する調査2020 — 日本労働組合総連合会, 2020年
- 「在宅夫婦のランチ」夫は平気でも妻にはストレス — 東洋経済オンライン





