9時始業のはずが、気づけば9時40分。保育園に長男を送った後、自宅に帰ってきてソファに座り、なんとなくスマホを開いて、そのまま30分以上たっていた。これが週3回ペースで起きていた時期がある。
ハウスメーカーの営業をやっていた頃は、営業所に着いた瞬間に仕事モードが入っていた。でも在宅勤務には、あの切り替えスイッチがない。「やる気の問題」だと思って気合を入れてみたけれど、3日で元に戻った。
結局たどり着いたのが「フェイク通勤」と「前夜の1行メモ」の組み合わせです。追加コストゼロ、合計10分もかからない。先週の大掃除で試したら、ではなくて、もう1年以上これで回っています。
始業が遅れるのは「意志が弱い」からではない
在宅勤務で朝がズルズルになるのは、サボっているわけではないです。通勤という物理的な区切りがなくなったことで、脳が「ここから仕事」と認識するタイミングを失っているだけ。
内閣府経済社会総合研究所が公表したテレワーク研究(ESRI Discussion Paper No.386)でも、在宅勤務者が生産性を落とす要因として「生活と仕事の境界があいまいになること」が挙げられています。場所の移動や姿勢の変化といった身体的なトリガーがないと、集中モードへの切り替えがうまくいかない。
必要なのは、「もっと気合を入れる」ことではなくて、体に「ここから仕事」と覚えさせる物理的な区切りを1つ作ること。我が家で試行錯誤して続いたのが、次のフェイク通勤でした。
保育園送りの帰り道を1ブロック遠回りする「フェイク通勤」
やり方はシンプルです。保育園に子どもを送った帰り、いつもの道を1ブロックだけ遠回りして帰宅する。追加で歩くのは200〜300mくらい、時間にして5分程度。
ポイントは、帰宅して玄関でスニーカーを脱いだ瞬間を「始業の区切り」にすること。靴を脱ぐ、手を洗う、デスクに座る。この3動作を毎日同じ順番で繰り返していると、体が「あ、仕事だ」と反応するようになります。やってみると意外と簡単で、1週間もすれば体が勝手に動いてくれます。
私の場合、始業が40分遅れていたのがほぼ定時に揃うようになりました。夫に渡したら案外うまくいって、夫はコンビニでコーヒーを買って帰宅、缶を開けたら始業という自分バージョンを作ってくれた。形は違っても「物理的な区切りが1つある」という共通点があれば機能するとわかりました。
保育園送りがない人の応用パターン
子どもがいない家庭や、パートナーが送り担当の日でも使えます。家の周りを1周散歩する、マンションのエントランスまで往復する、ゴミ捨てのついでに1ブロック歩く。大事なのは「家の外に出て戻ってくる」動作を始業前に1回入れることです。
りっすん by イーアイデムでも、在宅ワーク歴の長い人が朝の散歩を「擬似通勤」として実践している例が紹介されています。在宅勤務歴が長い人ほど、自然とこの仕組みにたどり着くようです。
「前夜の1行メモ」で朝イチの迷いをゼロにする
フェイク通勤で体のスイッチは入るようになった。でも、PCを開いた瞬間「さて、何から手をつけよう」と迷ってしまうことが残っていました。メールを眺め、Slackを流し読みし、気がつけば30分が溶けている。
これを解決してくれたのが、保育園のお迎えコール用に作っていた「中断メモ」の応用です。もともと突然のお迎えコールに備えて「今やっていた作業と次の一手」を5分で書き出す仕組みを使っていたのですが、その構造がそのまま始業にも効くと気づきました。
やり方は簡単で、終業時に「明日の朝いちばんにやること」を1行だけホワイトボードに書く。「○○の記事の見出し3を書く」「△△のメール返信」くらいの粒度で十分です。翌朝、PCを開く前にホワイトボードが目に入ると、そのままデスクに向かって手が動きます。朝の空白時間がほぼゼロになりました。
書く場所はPCの外にする
ホワイトボードがいちばんおすすめですが、冷蔵庫の付箋でもスマホのメモアプリでもかまいません。条件は「PCを開く前に目に入る場所」に置くこと。PCのデスクトップに貼る付箋アプリだと、起動してからSlackに引っ張られるリスクがあるので物理的な場所のほうが効きます。
書くのは1行だけ。粒度は「朝イチの5分で手をつけられること」に絞ってください。「企画書を仕上げる」だと大きすぎて迷いが戻ります。「企画書の冒頭3行を書く」なら手が動く。この違いが大きいです。
雨の日や真冬でも続ける室内バージョン
札幌の冬はマイナス10℃の朝もあるので、「1ブロック遠回り」が正直つらい時期があります。そこで冬場は室内バージョンに切り替えています。
着替える、カバンからPCを出す、デスクに座る。この3動作を「フェイク通勤」の代わりにしています。パジャマのまま仕事を始めないというルールだけですが、着替えるという動作が思った以上に切り替えスイッチになります。夫は真冬でもコンビニコーヒーを買いに行く派なので、合うパターンは人それぞれです。
全部やる必要はありません。フェイク通勤だけでも、1行メモだけでも効果はあります。うちでは結局この2つセットに落ち着いたけれど、あなたの生活リズムに合うものから試してみてください。どちらか1つでも、朝のダラダラが減る実感があるはずです。
FAQ
フェイク通勤は何分くらいがベスト?
5〜10分で十分です。長すぎると面倒になって続きません。うちでは保育園の帰り道プラス1ブロック(約5分)に落ち着きました。散歩が目的ではなく「区切り」を入れることがゴールなので、短くて大丈夫です。
前夜の1行メモは紙とデジタルどちらがいい?
PCを開く前に目に入る場所であれば、どちらでもかまいません。ただしスマホだと朝にSNSを開いてしまうリスクがあるので、ホワイトボードや冷蔵庫の付箋など物理的な場所がおすすめです。
子どもがいない場合でもフェイク通勤は有効?
有効です。保育園送りはきっかけに過ぎません。ゴミ捨てのついでに1ブロック歩く、コンビニまで往復するなど「外に出て戻る」動作なら同じ効果が得られます。一人暮らしの方は、決まったルートを1つ持っておくと続けやすいです。
終業の切り替えにも使える?
終業にはPCの自動シャットダウンタイマーや「3分リセット」(デスク上を片付ける習慣)のほうが効果的でした。フェイク通勤は「体を動かして仕事モードに入る」仕組みなので、仕事を止める方向には別のアプローチが向いています。
参考文献
- テレワークが就業者の働き方やウェルビーイングに与える効果:日本におけるエビデンス — 内閣府経済社会総合研究所, ESRI Discussion Paper Series No.386
- 仕事のオンオフ切り替えに"朝の散歩"はおすすめ。ベテラン在宅ワーカーが実践する「無理のない散歩生活」 — りっすん by イーアイデム
- 在宅勤務が労働者の生産性とメンタルヘルスに与える影響 — 経済産業研究所(RIETI)
- モーニングルーティン 21 選: 生産性向上につながるヒント — Asana, 2026






