去年の7月、工房の検証機が1台、夕立のあとに電源が入らなくなった。窓の外で光って数秒後にゴロゴロ鳴った程度の距離感で、直撃どころか近所に落ちたかも怪しいレベルの雷だったのに、電源ユニットだけきれいに死んでいた。CPUもGPUもストレージも無傷で、電源ユニットだけ。PCショップ時代にも夏場はこの手の持ち込みが多かったし、電源を入れても無反応だったりルーターだけ死んでいたりとパターンはいろいろだったけど、共通しているのは「雷が直撃したわけじゃないのに壊れている」という点だ。
犯人は「雷サージ」。近くに落雷があったとき、電線やケーブルを伝って瞬間的な過電圧が室内に流れ込む現象で、直撃雷じゃなくても家電やPCは壊れる。2026年7月現在、気象庁のデータによれば雷は7〜8月がピーク。雷ガード電源タップを挿しているから大丈夫、と思っている人も多いけど、実はそのガードがもう効いていない可能性がある。
雷サージはどこから入ってくる?電源・LAN・アンテナの3ルート
雷サージの正体は「誘導雷」と呼ばれるもの。雷が近くの地面や建物に落ちたとき、周囲の電線やケーブルに瞬間的な過電圧(数千〜数万ボルト)が発生して、コンセントやLANポートからPC内部に流れ込む。
侵入経路は大きく3つ。
- 電源コンセント: 最も多い経路。屋外の電柱から分電盤、コンセント経由でPCの電源ユニットに到達する
- LANケーブル: 見落とされがちな経路。ルーターが壁際のモジュラージャックに直結している場合、電話線やインターネット回線からサージが侵入してルーター経由でPCのネットワークカードに到達する
- アンテナケーブル: テレビの同軸ケーブル経由。PCでテレビチューナーを使っている場合は要注意
PCショップ時代に雷被害の持ち込みで壊れていたパーツには明らかな偏りがあった。一番多いのが電源ユニット。次にマザーボード。そしてルーター。電源ユニットが「犠牲になって」他のパーツを守るケースは実際にある(冒頭に書いた自分の工房の件がまさにこのパターンだった)。ストレージまで被害が及ぶケースは比較的少なかったけど、ゼロではないのでバックアップは別の話として必要になる。
雷ガード電源タップの選び方と「もう効いていない」落とし穴
雷サージ対策として一番手軽なのが、雷ガード(サージプロテクター)機能付きの電源タップ。内部にバリスタという素子が入っていて、異常な電圧がかかったときに吸収してくれる仕組みだ。
選ぶときに見るべきポイントは3つある。
最大サージ電圧。これが高いほど強い雷サージに耐えられる。一般的な製品で2,500V前後、高性能モデルで6,000V以上。サンワサプライの解説ページによると、家庭用であれば2,500〜6,000V程度が実用的とされている。
作動確認ランプの有無。結局のところ、ここが一番大事だったりする。バリスタは一度大きなサージを吸収すると劣化する消耗品で、劣化しても見た目はまったく変わらない。ランプが消えていたら「もう保護機能が切れている」のに使い続けている状態になる。エレコムの雷ガード特設ページでも、定期的にランプの確認を推奨している。自分の工房では年1回、梅雨入り前にランプをチェックするルーティンにしている。
LAN対応かどうか。電源側だけ守ってもLAN経由でサージが入ったら意味がない。LANポート付きの雷ガードタップか、別途LANサージプロテクターを噛ませるかの二択。ここを見落としている人がかなり多い。
ぶっちゃけ、雷ガードタップは万能ではない。直撃雷レベルのサージには耐えられないし、バリスタの応答速度を超える速さの過電圧に対応できない場合もある。あくまで「保険の一枚目」であって、最も確実な対策はケーブルを物理的に抜くこと。これは15年自作PCをやっていても変わらない結論だ。
LANケーブル経由のサージは電源タップでは防げない
雷対策で電源タップを雷ガードに替えたのにルーターだけ壊れた。PCショップ時代に実際に何台か見たパターンだ。原因はLANケーブルやモジュラーケーブル経由の雷サージで、電源側をいくら守っても通信ケーブル側が無防備なら侵入を止められない。
音羽電機工業の解説によると、LANケーブルを介して雷サージが侵入し、サーバやPCが破損するとデータ消失の可能性もあるとされている。一箇所でもサージ対策の漏れがあると、そこから全体に回り込むリスクがある。
対策としてはLANサージプロテクターをルーターとPCの間に設置する方法がある。サンワサプライやエレコムから1,000〜2,000円程度で出ていて、LANケーブルの中間に噛ませるだけで済む。ただ、雷注意報が出たらLANケーブル自体を抜くのが一番確実。電源は抜いたのにLANケーブルを忘れている人は自分の経験では相当多い。
自分の工房では雷注意報が出た段階で「電源ケーブル→LANケーブル→アンテナケーブル」の順で7台全部抜くルールにしている。鳴ってから動くのでは手遅れになることもあるので、注意報の時点で動くのがポイント。7台分のケーブルを全部抜くのは正直めんどくさいけど、1台でも壊れたときのパーツ代を考えると15分の手間は安い保険だと思っている。
雷が鳴る前にやっておくこと・鳴ったらやること
事前準備(今のうちに確認)
- 電源タップの雷ガードランプを確認する。消えていたら交換する
- ルーターとPCの間にLANサージプロテクターを設置する(まだ入れていないなら)
- 火災保険の契約内容を確認する。「家財」が補償対象に入っているかどうか
雷注意報が出たら
- 作業中のファイルを保存してシャットダウンする
- 電源ケーブルをコンセントから物理的に抜く。シャットダウンだけではダメで、ケーブルがつながっていればサージは入り込む
- LANケーブルをPCとルーターの両方から抜く
- アンテナケーブル(テレビ・チューナー)があれば抜く
落雷でPCが壊れた場合、火災保険の「落雷」補償で修理費用がカバーされるケースがある。ソニー損保の解説によると、火災保険の基本補償には「火災・落雷・破裂・爆発」が含まれており、「家財」を補償対象にしていればデスクトップPCの修理費用が対象になる場合がある。ただし保存データやソフトウェアは補償対象外で、保険会社やプランによって条件が異なるため、シーズン前に契約内容を確認しておくのが安全だ。
FAQ
雷ガード付き電源タップを使っていれば安全?
バリスタ素子は直撃雷レベルのサージには耐えられず、繰り返しの使用で劣化もする。被害を軽減する保険の一枚目として有効だが、最も確実な対策は雷注意報の段階でケーブルを物理的に抜くこと。作動確認ランプが消えていたら保護機能は失われているので交換が必要。
ノートPCならバッテリーがあるから雷サージは関係ない?
充電器をコンセントに挿したまま使っている場合は、電源ケーブル経由でサージが入る可能性がある。バッテリー駆動に切り替えてケーブルを抜いていれば電源経由のリスクはないが、LANケーブルを有線接続しているならそちらからの侵入にも注意が必要。
雷サージで壊れたPCのデータは復旧できる?
電源ユニットやマザーボードが壊れただけであれば、ストレージ(SSD・HDD)は無事なケースが多く、別のPCにストレージを接続してデータを取り出せる。ストレージ自体が被害を受けた場合は専門の復旧業者への依頼が必要になり、費用は数万〜数十万円になることもある。
マンションでも雷サージの被害は起きる?
起きる。雷サージは電柱の電線を通じて建物全体の電気系統に入り込むため、戸建てもマンションもリスクは変わらない。マンションでも雷ガード電源タップやLANサージプロテクターの導入は有効な対策になる。
参考文献
- 雷で家電やパソコンが壊れる「雷サージ」とは?今すぐやっておきたい雷対策 — Panasonic UP LIFE
- 雷の正しい基礎知識:雷から大切な機器を守ろう — サンワサプライ株式会社
- 雷対策は大丈夫?雷ガード機能付きタップで機器を守ろう! — エレコム株式会社
- 火災保険で「落雷」による損害は補償される?建物や家財への補償例や請求方法を解説 — ソニー損保
- LANシステムの雷対策 — 音羽電機工業株式会社






