筆者は以前、Microsoft 365の管理コンソールの仕様変更を1ヶ月見落としたことがある。Teamsの管理ポリシーが変わっていたのに気づかず、記事で案内した手順が丸ごと古くなっていた。あの苦い経験があるから断言する。Teams会議でCopilotを有効にしている組織は、今すぐトランスクリプト(文字起こし)の共有範囲を確認すべきだ。

結論から言う。2026年5月時点のTeams既定設定では、Copilotの会議ポリシーが「オンで、トランスクリプトの保存が必須(EnabledWithTranscript)」になっている。取引先の担当者が同席していれば、会議終了後にCopilotが生成した要約や発言録を相手側のTeams環境から閲覧できる状態がデフォルトだ。

なぜ取引先にトランスクリプトが見えるのか

仕様上の問題は明確だ。

Microsoftの公式ドキュメント(Teams の会議やイベントで Microsoft 365 Copilot を管理する、2025年4月30日更新)によれば、Copilotの動作モードは3段階ある。

  • 会議中および会議後: 文字起こしが保存される。Copilotライセンスを持つ参加者全員が会議後もトランスクリプトを参照できる
  • 会議中のみ: 一時的な音声テキスト変換データだけを使い、会議が終われば消える
  • オフ: Copilot無効。レコーディングと文字起こしも同時に止まる

ここが落とし穴になる。Teams管理センターのグローバルポリシーは、Copilotの既定値を「EnabledWithTranscript」に設定している。この値だと「会議中および会議後」が強制適用され、開催者が個別の会議で変更することすらできない。トランスクリプトは自動的に保存され、会議参加者全員——取引先の出席者も含めて——がアクセス可能な状態になる。

SIer時代にも構造的に同じ事故を見た。社内基幹システムの承認ログが「全社読み取り可」のデフォルトパーミッションになっていて、他部署から決裁内容を閲覧されていた。半年間誰も気づかなかった。デフォルト設定の放置は、発覚したときにはもう遅いケースが多い。

自組織の設定を確認する手順

まず現状を把握する。

Teams管理センターの場合:

  1. Teams管理センターにサインインする
  2. 左メニューの「会議」→「会議ポリシー」を選択
  3. 「グローバル(組織全体の既定)」をクリック
  4. 「記録と文字起こし」セクションで「Copilot」の値を確認

PowerShellの場合:

Get-CsTeamsMeetingPolicy -Identity Global | Select-Object Copilot

返り値が EnabledWithTranscript なら、トランスクリプトの保存が強制されている状態だ。開催者が会議ごとに「会議中のみ」に切り替えるオプションも封じられている。

管理者がやるべきポリシー変更

対策は2段構えになる。

第1段: Copilotポリシーの変更

外部参加者を含む会議の開催者には、Copilotポリシーを「Enabled」に変更する。この値にすれば既定が「会議中のみ」になり、トランスクリプトは会議終了と同時に破棄される。社内会議で議事録を残したい場合は、開催者が「会議中および会議後」に手動で切り替えればよい。

Set-CsTeamsMeetingPolicy -Identity "外部会議用" -Copilot Enabled

このポリシーを外部会議が多い部署やユーザーグループに割り当てる。

第2段: トランスクリプトのアクセス制限

Microsoft公式のアクセス制御ガイドによれば、会議の開催者はトランスクリプトのアクセスレベルを3段階から選べる。

  • 全員(既定): 参加者全員がアクセス可能
  • 開催者と共同開催者のみ: 主催側だけに限定
  • 特定のユーザー: 指名したメンバーだけ

取引先が参加する会議では「開催者と共同開催者のみ」が安全だ。ただし、CopilotライセンスまたはTeams Premiumのいずれかが必要になる。ライセンスなしの環境ではこのアクセス制御自体が使えない点に注意してほしい。

B2Bメンバーアクセスも確認する

もう一つ見落としがちな設定がある。

マルチテナント組織(MTO)を構成している企業グループでは、B2BメンバーのCopilotアクセスがデフォルトでオンになっている。パートナー組織のCopilotライセンス保持者が、自社ホストの会議でもCopilotを使えてしまう。

無効にする手順は、Teams管理センターの「ユーザー」→「B2Bメンバーアクセス」から。

ただし、B2BメンバーアクセスはMTO構成の組織間だけで有効であり、通常のフェデレーションユーザー(一般的な取引先)には適用されない。大半の企業にとって、前述のCopilotポリシー変更とアクセス制限の方が直接的な対策になると判断する。

設定後に忘れてはいけないこと

ポリシーを変えて終わりではない。

月1回は以下を確認することを推奨する。Microsoftは管理コンソールの仕様変更を頻繁に行う。実際に筆者もTeams管理ポリシーの設定項目が移動していたのに1ヶ月気づかず、執筆した記事の手順がそのまま古くなった経験がある。

  • Teams管理センターでCopilotポリシーの値が意図した設定のままか確認
  • 新規作成した会議テンプレートにCopilot設定が正しく反映されているか確認
  • 外部参加者を含む定例会議の開催者に「会議中のみ」設定のリマインド

※ 検証はMicrosoft Teamsデスクトップ版およびMicrosoft 365管理センター(2026年5月時点)で確認した。管理画面の構成は頻繁に変わるため、操作画面が異なる場合はMicrosoft LearnのTeamsドキュメントで最新版を参照してほしい。

FAQ

Copilotを使わなければトランスクリプトは保存されない?

Copilot設定が「会議中および会議後」の場合、Copilotを使う・使わないにかかわらず文字起こしが自動で開始・保存される仕様だ。保存を防ぐには開催者が「会議中のみ」に変更するか、管理者ポリシーを「Enabled」に設定する必要がある。

管理者権限がない一般ユーザーはどう対処すればいい?

管理者ポリシーが「EnabledWithTranscript」以外であれば、会議オプションからCopilotの値を「会議中のみ」や「オフ」に変更できる。変更できない場合はポリシーで強制されている。情シス部門にポリシー変更を依頼するのが正しい手順だ。

「会議中のみ」にするとCopilotの機能は制限される?

会議終了後にCopilotの要約や発言履歴にアクセスできなくなる。社内限定の定例会議は「会議中および会議後」、取引先が参加する会議は「会議中のみ」と使い分けるのが現実的な運用だと判断する。

エンドツーエンド暗号化を有効にすれば解決する?

エンドツーエンド暗号化を有効にした会議ではCopilot自体が使えなくなる。機密性の高い商談や法務案件では有効だが、Copilotの利便性との二律背反になる。

参考文献