毎朝、工房の7台のPCを立ち上げながらコーヒーを飲む時間に、各マシンの温度ログを確認するのが習慣になっています。ベンチマークを走らせる前に温度を見る、というルーティンを続けているうちに、あるときCrystalDiskInfoの健康状態が「注意」に変わっていた検証機を朝一番で発見できました。バックアップを即座に取って、SSDを先手で交換できた。データ損失ゼロで済みました。

「温度なんて見なくても大丈夫」という人は多いんですが、夏場だけは話が違います。室温が30度を超える環境では、アイドル時の温度も上がるので、これまで平気だったPCが急に限界に達するケースがある。PCショップ時代も、夏場の「突然落ちる」持ち込みの3〜4割が熱暴走でした。

HWiNFO64は、そのための最も確実なツールです。CPU・GPU・SSDの温度を一画面で見張り、危険温度でアラートを出す設定まで10分程度でできます。

タスクマネージャーのCPU温度では見えない部分がある

Windows 11のタスクマネージャーにはCPUの温度が表示されるようになりましたが、見えるのはCPUのパッケージ温度のみです。GPU温度、SSD温度、マザーボードのVRMやチップセット温度は表示されません。

自分のメイン機(Ryzen 9 7900X + RTX 4070 Super)でも、GPUが負荷時に95度近辺まで上がって、ベンチマークのスコアが伸び悩んでいた時期があります。タスクマネージャーだけ見ていたら気づかなかった。HWiNFO64でGPUコアとホットスポット温度を確認してはじめて、サーマルスロットリングが起きているのを発見しました。グリスとサーマルパッドを全交換したら、アイドル温度が15度下がって3DMarkスコアが7%改善した。

タスクマネージャーはパフォーマンスの概要把握には向いていますが、熱のトラブルシューティングには不十分です。詳細なセンサー情報が必要なときは、HWiNFO64のようなツールが必要になります。

HWiNFO64のインストールと起動設定

まずHWiNFO公式サイト(hwinfo.com)からダウンロードします。無料の「Freeware」版で今回の用途はすべてカバーできます。インストーラー版とポータブル版があり、インストールしたくない場合はポータブル版でも同じ機能が使えます。

起動すると「Sensors-only」と「Sensors + Summary」の選択肢が出ます。センサー情報だけ見たい場合は「Sensors-only」でOKです。起動後にセンサー画面が開くまで数十秒かかることがありますが、これは正常の動作です。

Windows起動時に自動で立ち上がるようにするには、上部メニューの「Settings」→「General」タブで「Start Minimized」と「Minimize to system tray」にチェックを入れます。さらに「Auto Start with Windows」にチェックを入れると、ログイン後に自動起動します。

(自分は検証機7台すべてにHWiNFO64を常駐させています。タスクスケジューラー経由で起動設定していた時期もありましたが、Auto Startオプションを使うほうが管理が楽でした)

確認すべきセンサーと危険温度の目安

HWiNFO64を開くと大量のセンサーが並んでいて最初は戸惑います。まず確認すべき項目を絞ります。

CPUコア温度(CPU Core Temperature または Tdie):ゲームや動画エンコードなどの高負荷時で90度を超えたら要注意。AMD Ryzen(Zen 3以降)のサーマルコントロール上限(Tjmax)は95度で、これを超えるとクロックが抑制されます。Intel Coreシリーズも100度付近でスロットリングが始まります。

GPUコア温度(GPU Temperature):NVIDIA GeForce RTXシリーズは83〜84度付近でサーマルスロットリングが始まるモデルが多いです(モデルによって異なります。NVIDIA公式の仕様ページで確認できます)。ゲーム中に80度を超えてくるなら、ファンカーブの調整かグリス交換を検討する時期のサインです。

GPU Hotspot温度:RTX 30/40シリーズはHotspot温度(内部最高部位の温度)も表示されます。Hotspotは通常コア温度より15〜20度高く、110度付近がメーカーの上限目安です。ゲーム中にHotspotが95度を超えてくるなら要注意です。

SSD温度(Drive Temperature):NVMe SSDは60〜70度を超えるとサーマルスロットリングで転送速度が落ちます。CrystalDiskMarkのベンチマーク中に速度が急に落ちるなら、SSDの過熱が原因のケースがあります。ヒートシンクなしのM.2 SSDは特に夏場に要確認です。

全部を常時表示するのは現実的ではないので、次のステップで重要なセンサーだけシステムトレイに表示する設定をします。

アラートとシステムトレイ表示を設定する

特定のセンサーをシステムトレイに表示するには、センサー名を右クリックして「Add to Tray」を選択します。自分の場合は「CPU Package Power」「GPU Temperature」「CPU Core Temperature #0」の3つを常時トレイ表示しています。作業中にチラッとタスクバーを見るだけで大まかな状態がわかります。

アラートの設定は右クリックメニューの「Configure Sensor Alert」から行います。たとえばGPU Temperatureにアラートを設定する場合:

  1. 「GPU Temperature」を右クリックして「Configure Sensor Alert」を開く
  2. 「High Limit」に閾値温度(例:83)を入力する
  3. 「Alert via pop-up notification」にチェックを入れる
  4. 「OK」で保存する

これでGPU温度が83度を超えた瞬間にWindowsの通知ポップアップが出ます。通知に気づいたら、ゲームの設定を下げるか、PC側の冷却を見直すタイミングだと判断できます。

自分が設定しているアラート閾値は以下です(あくまで参考として):

  • CPU Tdie / Package: 90度
  • GPU Temperature(コア): 83度
  • GPU Hotspot: 100度
  • NVMe Drive Temperature: 65度

これはうちの工房環境での目安なので、CPUやGPUのメーカー仕様に合わせて調整してください。AMDとIntelではスロットリング開始温度が違います。

温度ログを保存して傾向を見る

HWiNFO64はCSV形式でセンサーの温度ログを保存できます。上部メニューの「Logging」からログ開始・停止ができます。ログを週1回見返すと「この2週間で平均温度が3度上がった」といった傾向に気づけます。

掃除のタイミングを感覚で決めるのではなく、温度の推移で判断するほうが確実です。「アイドル温度が先月より5度高い」なら、ファンフィルターにホコリが詰まってきたサインかもしれない。その積み重ねが、データ損失を未然に防ぐことにつながっています。

ただし、ログファイルはデフォルトで数十MBになることがあります。不要なセンサーは右クリックメニューの「Hide Value」で非表示にしてからログを取ると、ファイルサイズと見やすさが改善されます。

冒頭のSSD「注意」発見も、ログに残していた温度推移の変化が最初の手がかりでした。問題が表面化してから慌てるより、週単位で傾向を記録しておく方が、原因の特定が圧倒的に速くなります。

FAQ

HWiNFO64がウイルス対策ソフトに検出されましたが大丈夫ですか?

一部のセキュリティソフトが誤検知するケースが報告されています。HWiNFO64はハードウェアの深いレイヤーにアクセスする性質上、ヒューリスティック検査で引っかかることがあります。公式サイト(hwinfo.com)からダウンロードしたファイルであれば安全です。誤検知が気になる場合は、セキュリティソフトの除外リストにHWiNFO64の実行ファイルを追加してください。

CPU温度が高いとき、まず何を試すべきですか?

最初はホコリの清掃とCPUクーラーの取り付け確認から始めるのが順番です。エアダスターでCPUクーラーとファンのホコリを除去して再計測し、温度に変化がなければCPUグリスの塗り直しを検討します。グリスは3〜5年で劣化するため、使用年数が長いPCでは効果が出やすいです。それでも下がらない場合は、PCケースのエアフロー(吸気・排気のバランス)を見直します。

ノートPCでもHWiNFO64は使えますか?

使えます。ノートPCでも同様にセンサー情報を取得できます。ただしノートPCはデスクトップに比べて冷却に余裕がないため、80度を超えるCPU温度が常態化しているなら、布団や膝の上での使用を避けるか、冷却スタンドの導入を検討してください。

HWiNFO64をインストールしたらPCが重くなりますか?

通常使用では体感できるほどの負荷はかかりません。バックグラウンドでのCPU使用率は概ね0〜1%程度です。センサーの読み取り間隔を最短(100ms)に設定すると多少の負荷が増えますが、2000ms(2秒)程度で十分な精度が保てます。基本はデフォルト設定のまま使うので問題ありません。

参考文献